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映画「Spotlight」(スポットライト)雑感
第88回アカデミー賞作品賞&脚本賞受賞と言う栄誉に影響されて「Spotlight 世紀のスクープ」を観に行きました。見終わった後は、説得力のある脚本や俳優全員の迫真の演技に溜息が出ました。地味な映画という評判でしたが、実話を扱っていること、新聞記者たちが丹念な取材を積み上げ、衝撃の事実が証されていく過程に鬼気迫るものがありました。パンフレットの冒頭に「2002年1月、アメリカ東部の新聞『ボストン・グローブ』の一面に全米を震撼させる記事が掲載された。」とありました。神父による児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃の醜聞、しかもその半端ない数の多さに、映画を観ている私たちも愕然としました。私にとってカトリック教会は馴染みのある存在ではありません。欧米には歴史から言ってもキリスト教の信者は多く、聖域とされる部分もあろうと推察いたします。そこに報道のメスを入れるのは妨害や圧力もあったはずですが、よくぞ事実の積み重ねから告発に踏み切れたなぁと改めて思います。映画の中の台詞から引用すると、「貧しい家の子には教会が重要で、神父に注目されたら有頂天。自分を特別な存在に感じる。神様にノーと言えますか?」とあります。「これは肉体だけでなく、精神への虐待だ。信仰を奪われ、酒やクスリに手を出し、飛び降り自殺する者もいる。」と被害者の男性は告発しています。社会的モラルだけではなく、宗教と貧困の問題にも焦点が当てられています。既に決着している事実を映画化する際の難しさもあろうかと思います。あるいはまだ未解決の部分もあるのかなと勝手な思いを抱いてしまいます。ともあれ、「Spotlight 世紀のスクープ」は上映時間を感じさせないほど観客を引き込み、ジャーナリズムの正統な魂を伝えることに成功している映画と言えます。「これは面白かったなぁ」と思わず家内と頷いた映画でした。