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映画「十戒」の思い出
現在読んでいる「人間モーセと一神教」(フロイト著 吉田正己訳 日本教文社)が契機になって、黄金時代のハリウッドが制作した大作映画を思い出しました。セシル・B・デミル監督の「十戒」は2つあって、古い1923年版の「十戒」を、当時私が在籍していたミッション系高校の講堂で観た記憶があります。その後、友人と映画館に出かけ、同監督の1956年版「十戒」を何度か観ました。これはチャールトン・ヘストン主演の豪華絢爛たるスペクタクル超大作で、紅海が割れるシーンに圧倒されました。映画は旧約聖書の「出エジプト記」を基に作られていて、たまたま学校の教室に聖書があったので何度も読み返しました。モーセはヘブライ人の家庭に生まれ、ファラオの新生児殺害の命を逃れて、ナイル川に流され、エジプトの王族に拾われて育てられた、というのが物語の発端でした。果たしてこの「出エジプト記」の信憑性をどう扱えばいいのか、映画に特撮で描かれたシーンは何かの比喩ではないのか、そもそもモーセは実在した人物か、ユダヤ教の起源とモーセの関係はどうだったのか、エジプトからの脱出劇はあったのか、多神教で偶像を崇拝していたエジプトの宗教から、厳しい戒律のある一神教がどうして生まれたのか、シナイ山はどこにあるのか、ユダヤ民族に関して勉強不足の私にとって素朴な疑問が次々に湧いてきます。これは「人間モーセと一神教」の影響によるもので、著者のフロイトが心理学的視点から真実に迫ろうとする姿勢に触発されて、昔観た映画「十戒」を思い出したのです。映画「十戒」はまるで西洋絵画を見ているような映像が次々に現れて、その美しさに感動しました。コンピューター処理がなかった時代に、よくぞあの映像が撮れたものだと改めて感心します。