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「現な像」読み始める
「現な像」(杉本博司著 新潮社)を読み始めました。著者杉本博司氏は現代美術作家ですが、写真の世界では「劇場」シリーズや「海景」シリーズで、独自な感性を持った作品で注目されています。とりわけ私は全米の映画館を撮影した「劇場」シリーズが大好きで、昨年の大がかりな展覧会でまとまった作品群を拝見させていただきました。6月には出張で訪れた京都の細見美術館でも「杉本博司 趣味と芸術ー味占郷」展が開催されていて、小さな規模ながら古美術と現代的感性のコラボレーションが絶妙で、興味津々で見させていただきました。11月には東京写真美術館で大規模な展覧会「杉本博司 ロストヒューマン展」があって、杉本ワールドには1年間で2度接する幸運に恵まれました。「現な像」は6月の個展の際に細見美術館のアートショップで購入しました。本書は「新潮」に連載されたエッセイをまとめたもののようです。頁を捲っていくと仏像等の古美術に関するものや歴史に関するものが散見されます。現代という視座を推し量る上で、歴史の出来事や哲学や宗教を介して洞察し、そこから現代そのものを導き出してくる手法は、彼の造形美術と同じで、造形と思索双方から杉本ワールドに誘われていくように感じます。しばらくは通勤の友として本書を読んでいこうと思います。