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「見えないものを見る」読み始める
「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 法政大学出版局)を読み始めました。画家カンディンスキーに関しては「芸術における精神的なもの」や「点・線・面」など数々の翻訳本を読んできましたが、新たな出版物が見つかると、つい購入してしまう癖が私にはあります。もうここまでくると自分はカンディンスキー教の信者かもしれないと思うほどです。私の眼鏡拭きもカンディンスキーの「30」というモノクロの抽象作品をデザインされたものを使っていて、眼鏡をケースから取り出す度に、カンディンスキーを身近に感じています。本書は現象学者として著名なフランス人ミシェル・アンリによる抽象絵画の考察で、カンディンスキーが提唱した理論をベースに、すべての絵画は抽象絵画に包摂されると説くものです。まず最初の章で外部と内部という二つの現象的特質が述べられていました。「絵画の内容、すなわち絵画によって最終的に『表されている』、というよりも表現されているものは、この世界の一要素ないしは一部分ー自然現象ないしは人間にかかわる出来事ーとしてもはやこの世界に帰属していないだけでなく、諸方法が芸術の新しい主題を構成する目に見えない内容の表現を可能にしているのだから、今やそれらの方法自体が、意味的には『内部の』ものとして理解されなければならないし、結局は方法の真の実存在においてー『目に見えない』ものとしてー理解されなければならない。」これをカンディンスキーによって成し遂げられた驚くべき革命と本書では主張しています。読書するこちら側も本書で使われている語彙を丁寧に考えながら進めていきたいと思っています。