Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「運命空間」の人間群
通勤の友として現在読んでいる「触れ合う造形」(佃堅輔著 西田書店)の最初に登場する芸術家がムンクとロダンです。ノルウェーの画家ムンクとフランスの彫刻家ロダン。この2人の巨匠の間に何かしら共通点があったとは、自分はまるで知りませんでした。苦悩する人々を表現した作品に似通ったテーマが認められますが、私はまったく別々の情報から知り得た画家と彫刻家だったので、同時代を生きたことも知りませんでした。ムンクが奨学金を得てパリにやってきて、そこでノルウェー人彫刻家を通して初めてロダンの作品を知ったようです。ロダンの内面から表出された人体塑造は、ムンクの人物表現に投影されていて、人間のポーズから精神性に対する追求が始まったように思えます。こんな一文がありました。「ロダンの芸術がムンクにとって重要だった本質的な観点を、展望しながら要約するならば、次の点が確認されるのである。それは何よりもまず、ムンクに影響を及ぼしたロダンの主題とモティーフ、内容に関するもの、思想の豊かさ、象徴主義である。ロダンにおいてエロス、移ろいゆくものと死をふくめて生命の実存的なものが、高い相対的価値を占めている。二人の作品は、この緊密な複合体をめぐっているのだ。さらに、ムンクに強い印象を与えたロダンの作品における造形力と彫塑的なものがある。~略~ムンクは彫塑的表現への志向をますます強めて、独自なモデリングを首尾一貫して試みるようになったのである。」ムンクの彫刻作品を私は知りませんでしたが、空間に対するムンクの関心はロダンからきていることを悟りました。さらに「アイゼンベルトは、ロダンに人物たちのまわりには、『ある種の運命空間』が不可視的に生きている、あるいは空間的関連を暗示的にモデリングする浮彫りや群像作品に見られるように、可視的にも『ある種の運命空間』が生きているという。それは単に印象主義的な雰囲気とロダンの場合に特徴付けられたものではない。それはここでは、むしろ、より濃密な空間なのであって、この暗闇から人物たちが《地獄の門》における身体のようにあらわれ、そしてこの空間のなかへ、またふたたび深く沈みうるのだ。ロダンの身体は、宇宙的と感じられたこの空間のなかで、しばしば『漂っている』」