Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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初心を忘れないために…
創作活動にしろ、公務員の仕事にしろ、それを始めた頃の自分はどうだったのか、初心を忘れないようにしたいと日頃から私は考えるようにしています。とりわけ創作活動において慣れは禁物です。造形美術の場合は技法の習得は必要ですが、そこに留意しなければならないこともあって、腕前が巧みになればなるほど、心がそこにあらずの腑抜けた作品になってしまう恐れがあるのです。技法の習得は作品の内容に関わるものであり、勿論超絶技巧は鑑賞者を惹きつける要素にもなり得るのですが、芸術で一番重要と思われるのは、技巧ではなく精神性であることは美術史が認める事実です。精神性はこうしたい、ああしたいと願う自分の主張や思索があって、その具現化に骨を折る過程で培われるもので、小手先で器用に達成できるものではありません。そうした自分への追い込みがあるからこそ、取り組みとしての創作活動は厳しいのだろうと私は理解しています。自分の創作活動はいつ始まったのか、どんな動機で始めたのか、その時は何を目指していたのか、あれこれ思いを巡らせて、現在やっている陶彫制作やRECORD制作の立ち位置を改めて見つめなおし、この先どのようにしていくべきかを暫し立ち止まって考えることを、私は例年この時期にやっています。幸い工房には美術の専門家を目指す若いスタッフたちがいます。美大受験生、美大生、そして学校を卒業したばかりのアーティスト、既に美術団体に所属するアーティストが工房に集っています。彼らを見ていると、私も初心を忘れないようにしたいと思うのです。そうした人たちが周囲にいることも私にとって幸せなことで、彼らの頑張る姿に影響を受けていることもあると思っています。若い頃の自分は美大の彫刻工房から創作の一歩を踏み出しました。その建物はもうありませんが、その時の気分は今も覚えています。工房で基礎デッサンをやっている若いスタッフを連れて、私が美大の催しに出かける理由として、初心を忘れないようにしたいという思いがあるためと言っても過言ではありません。