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「謎多い遊行僧円空にひかれて」について
「あそぶ神仏」(辻惟雄著 ちくま学芸文庫)のⅡ「謎多い遊行僧円空にひかれて」についてのまとめを行います。著者の出身が岐阜で円空に縁のある土地だったために、著者は折に触れて円空の歩いた道のりを辿り、そこで出会った円空仏について感想を書き記しています。私が円空仏を知ったのはいつの頃だったか記憶にありませんが、大きな展覧会が開催されるとよく出かけて行きました。円空が生涯で彫った仏像の数に圧倒されてもいましたが、私はその独特なフォルムに魅了されてきました。著者のように北国の寺を円空仏を求めて旅したい欲求にも駆られています。本文にある寺を書き出してみると、松島の瑞巌寺、大湊の常楽寺、恐山の円通寺、佐井の長福寺、油川の浄満寺、蓬田の正法院、三厩の義経寺、平舘の福昌寺、田舎館の弁天堂、弘前の西福寺、能代の竜泉寺、門前の五社堂、立川町の見政寺という具合で、私も松島と恐山に行ったことはありますが、円空仏に注目して訪ねたことはなく、本当に羨ましい限りです。円空の生地を求める旅では、岐阜県の美濃の洞戸村・高賀神社と美並村の円空仏を訪ねています。「高賀神社には立派な円空記念館が建っていた。中で迎えてくれたのは、まず、温かな微笑をたたえたほぼ等身大の『虚空菩薩像』、これは円空中期の鑿の冴えを伝える秀作である。有名な『十一面観音・善女龍王・善財童子三尊像』はひょろりと丈の長い、すこし歪んだ奇妙なかたちで、一本の丸木を三つに割ってそのまま彫ったためという。~略~これも有名な阿吽の『狛犬像』は、高賀神社の本殿の回廊に置かれていたもので、雲気文の崩れとおぼしい、風変わりで力強い文様が胴体を覆っている。~略~この像もまた、丸木を二つ割りしたものだということが、二体を向き合わせにくっつけた写真から知られるのだが、抱き合ってキスしたようなそのくっつき具合には、楽しみながら像のいのちを木から彫りだす円空の遊戯心が感じ取れる。」本書の図版で見て私も「狛犬像」の面白さに、現代彫刻の父ブランクーシの石彫「接吻」を連想してしまいました。円空仏の表情にも私は癒しを感じています。