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虎ノ門の「近代日本画の華」展
東京港区虎ノ門にある大倉集古館へこの歳になって初めて足を踏み入れました。若い頃から美術館巡りをしているにも関わらず、大倉集古館には行かなかったのが不思議なくらいです。調べてみると大倉集古館は日本で最初の私立美術館で、その独特な東洋的外観は建築家伊東忠太によるものです。内装は空想上の動物たちのレリーフのついた柱などがあって不思議な雰囲気があります。今回の展覧会は1930年にイタリアのローマで開催された日本美術展に出品された日本画の秀作を集めたもので、見応えとしては充分ありました。目を留めた作品としては竹内栖鳳の「蹴合」があります。二羽の軍鶏が戦う闘鶏の一場面を描いたものですが、体毛が逆立ち、目で相手を威嚇している様子は迫力満点でした。「これらの羽毛は、筆の穂にたっぷりと水分を含ませ、その穂先に絵具を吸わせて、筆をねかせて引くと、色彩のグラデーションが生まれる。これは円山・四条派の伝統的な〈付け立て〉と呼ばれる技法だ。」と解説がありました。次に印象に残ったのは河合玉堂の「高嶺の雲」です。一緒に行った家内が、屏風に広がった山脈の遠近感に感動していました。「何と壮大な空間であろうか。左隻に主峰ひとつ描かず、雲海のみで画面をもたせている。それはひとえに、右隻の主峰が力強く峻厳に描かれているからである。」解説の通りで、離れて本作を見ると空間の解釈の凄さがよく分かります。その他並んだ作品はどれも緻密で、表現に深さを感じさせるものばかりで、イタリアで日本画をアピールすることに文化国家の命運をかけていたのではないかと思いました。最後にこの巨匠を取り上げないわけにはいきません。その人は日本美術展代表を務めた横山大観で、当時の写真にはローマ展会場で羽織袴を身に着けて挨拶をしている大観の様子がモノクロ写真に写されていました。横山大観は「夜桜」という大作を出品していました。「大観は日本画の良さをイタリア人に示すため、琳派の要素を強く押し出そうとしたのだろう。~略~制作にあたり、大観は上野公園の桜を写生し、何度かの大幅な書き直しを経て一気呵成に本作を仕上げたという。」確かに「夜桜」を見ると派手な表現が目につき、いかにも外国人好みに合いそうな作風になっています。それでも高水準を保っているところは、さすが大観だなぁと思いました。