Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 新作の窯入れ始まる
例年なら11月を目安に窯入れを開始していますが、今年はやや早く10月後半から始めることにしました。幾度となくNOTE(ブログ)に書いてきましたが、陶を素材にした造形で一番重要で、細やかな神経を使い、また何度経験しても難しく、また抜群に面白い工程が最後の焼成になります。制作工程での焼成に至るまでの過程は、土練りをして大きなタタラを作り、それを暫し固めたところで成形を行い、そこに彫り込み加飾を施し、数週間にわたって乾燥させます。さらに表面をヤスリがけし、指跡を削り取り、化粧掛けを施して、漸く窯入れに辿り着くのです。窯に入れて焼成が始まりますが、そこで失敗すると今までの制作工程が全て水泡と化し、私は心底落ち込みます。しかしながら若い頃に比べて今は打たれ強くなっているせいか、立ち直りも早くやってきてくれます。つまり窯入れは私にとって最重要な最終工程で、このために今までの作業があったと言っても過言ではありません。また窯入れは人の手が及ばない神聖な行為とも言え、窯の中の高温変化によって陶土が石化するわけですが、そこには炎神が棲んでいるようにも思えて、窯に蓋をすると手を合わせたい思いに駆られます。年の初めに窯に正月飾りを置くのも、その年の安全を炎神に祈願するものと私は思っています。確かに陶土は窯の中で別の質感になって戻ってくるので、炎神に鍛えられ、陶土は鎧を纏って火炎の旅から堂々帰還してくるように、私はイメージしています。これがあるからこそ陶彫はやめられないと思う瞬間でもあるのです。ただし、私の場合は公務員との二足の草鞋生活のために窯にずっと付き添うことができず、処理の簡単な電気窯を入れています。本来焼成の醍醐味は薪を炊く登り窯にあることは充分承知しています。窯内の場所によって陶の焼き具合が変わり、釉薬との関係で不思議な風景が陶土に現れるのです。それに比べて電気窯は均一に焼けるため、面白味に欠けるところがありますが、それでも窯内の変化に私は喜びを見出しているのです。今日は窯入れ前に小さな陶彫成形を2点行ないました。15点目と16点目の陶彫成形です。彫り込み加飾は次回に回します。今日もいつものように美大受験生が来ていました。夕方、彼女を家の近くまで車で送ってきました。