Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「概観」・「絵画と彫刻」について
「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の第一部「19世紀における『画家=彫刻家』と『芸術家=職人』の登場」の第1章「画家と彫刻家」の「1概観」と「2絵画と彫刻」についてのまとめを行います。本書は読み始めから興味関心が尽きず、絵画と彫刻のパラゴーネ(比較論争)には私も思うところがあり、読んでいて楽しくなってしまいました。「1概観」から引用いたします。「(20世紀の)彼らは画家であったがゆえに、彫刻の世界のさまざまな桎梏、すなわちギリシャ彫刻の確固とした伝統に由来する主題や技法上の制約や前提から自由であり、思いのままに大胆に三次元での制作を行うことができた。その結果、彼らの手から革新的な彫刻が生み出されたのである。とはいえ、彼らは決して彫刻の伝統に無頓着であったわけではない。」さらに「このような画家の、あるいは彫刻家の他方の芸術の実践、もしくは互いの関心や闘いは、パラゴーネ論争(諸芸術の優劣比較論争を意味する)が盛んであったイタリアの伝統に連なるものである。レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロを代表とする絵画と彫刻をめぐる論争は、ミケランジェロが素描を共通とした姉妹芸術であることを提唱して、幕引きが計られたのであるが、イタリアでは、17世紀のベルニーニに至るまで、絵画、彫刻、建築などさまざまな芸術を手がける芸術家が多数を占めていた。」ということがあったようです。「2絵画と彫刻」の中では、画家と彫刻家の空間把握に関することが理論家ヒルデブラントによって考察されていました。「動く視線によって得られる視覚『印象』から出発するか、直接的に視覚『表象』から入るかの違いはあるにせよ、彫刻家と画家の空間把握に対する合理的アプローチは同じであり、これがすなわち西洋の古典主義芸術の基本原理として実践されてきたものであった。」その後、ここではミケランジェロ、ロマン主義、オノレ・ドーミエに関する考察があり、「もはや絵画と彫刻のどちらが上位の芸術かという『論争』ではなく、『表現』を共通項とした両者の『連携』へと導かれていたといえるのである。」と結ばれていました。