Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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2つの新しい印を作る
石による印材に自分の名前を自ら彫り、新しい作品が完成した時に裏側に印を貼っていくのが、私が今まで続けてきた方法です。私の作品が集合彫刻で陶彫や木材で成り立っているため、その組み立てにそれぞれの部品に番号が必要であり、サインの変わりになるものも必要となるため、新作には常に新しいデザインの印を併せて作り、小さな和紙に押印し、そこに番号をつけていくのです。番号つきの印はそれぞれ部品の見えない部分に貼るので、作品の完成後も裏方としての手間はかかります。ただし、印の創作も結構面白いので、今も継続している次第です。印材はサイズに大小あり、画材店でまとめて購入しています。元来、印は書に押す落款ですが、私は様式に対する拘りはなく、寧ろ極小の抽象絵画と思っていて、自分の氏名を自由にデザインしています。時に篆刻でやってみたり、アルファベット表記でやってみたりするだけでなく、自分の氏名を崩しすぎてよく分からない世界を作ってしまうこともあります。RECORDは一日1点ずつ作っている小さな平面作品なので、一年に1回小さな印を作り、年間を通じてその印を右下に押しています。その印によって制作した年がわかるようにしているのです。大きな彫刻作品には毎回新しい印を作っていますが、「陶紋」としてシリーズ化している小作品は、どれも同じ印を用い、番号も通し番号にしています。私は嘗て教壇に立っていた頃、印刻を教材として扱っていました。私が最初に試みた印は教材研究として作ったもので、篆書を基に陽刻と陰刻を織り交ぜた氏名印を彫りました。その頃、生徒には文字は篆書のみで行うように強制していましたが、やがて自由な発想を取り入れるようになり、教壇を去る頃には印刻はカリキュラムから外してしまいました。印刻自体の発展性と学びの柔軟性に疑問を感じたからこのカリキュラムを止めてしまったのですが、私自身は自分の制作を継続していて、画材店でさまざまな石材を購入して楽しんでいました。教職の合間の休憩時間に印を彫っていると、とても良い気分転換になりました。新作の彫刻作品の裏側に印を貼るという発想の前から、私は印に親しんでいたことになります。今回は「発掘~盤景~」と「構築~視座~」の2つの印を彫っています。