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「結語」について
「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「結語」の「1 木彫と陶器」「2 親密な環境における彫刻」「3 ゴーギャンからピカソへ」の三単元を合わせたまとめを行います。これで「中空の彫刻」の内容は全て完結したことになります。まず「1 木彫と陶器」の中からこんな文章を引用いたします。「大理石彫刻に始まった彫刻制作において、ゴーギャンは主として木彫と陶器を交互に扱いながら、これらの民衆的で実用的な素材によって驚くべき創造物を生み出した。~略~絵画支配のパラダイムを打破して新しいモダンな彫刻への道を切り開くことが可能となったのである。」ゴーギャンにとって彫刻は絵画制作の補助的な存在ではなく、同じ比重を持って取り組んだことが示されています。次に「2 親密な環境における彫刻」から次の文章を引用いたします。「焼き物による彫刻の実践が、中空を取り巻く表面の上での表現へ、人物の断片的アプローチへ、そしてこれらの断片の装飾的構成へとゴーギャンを導いたのは必然であった。モティーフは外面に配されるので、観者は作品の周囲を回り、作品の意味づけそのものに参加することを促される。親密な環境における観者とのこうした新しい関係においては、20世紀の近代彫刻への道の一つである”オブジェ=彫刻”の出現が指摘されうるであろう。」ここで本書はブランクーシを登場させています。ブランクーシは1点の作品とともに幾つかの作品を並べたアトリエ内部の写真を撮り、観者と親密な関係を築くためにその環境を提示したようです。最後に「3 ゴーギャンからピカソへ」ではこんな文章がありました。「『あらゆることを敢行する権利』にしたがって生み出されたゴーギャンの大胆な立体作品は、青年ピカソに大きな衝撃と勇気を与えたことであろう。その後キュビスムの文脈において、内部空間を見せる開かれたフォルムを実現するとき、ゴーギャンの『中空の彫刻』はその概念において、すでにピカソに先行していたと言えるのである。さまざまな芸術分野の垣根を取り払い(多分野性)、素材の枠を広げ(多素材性)、多様な芸術を創造したゴーギャンは、確かに稀有な革新の芸術家であった。彼はまた、19世紀末まで絵画支配のパラダイムのもと、下位におかれていた彫刻が20世紀に隆盛を誇ることになるのに貢献した主要な芸術家ではなかったか。そのために、彼の『中空の彫刻』は画期的な表現を生み出したことを私たちは見てきたのである。」