Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「孤独なる彫刻」読後感
「孤独なる彫刻」(柳原義達著 アルテヴァン)を読み終えました。著者が渡仏した1951年には、日本人留学生も僅かしかいない状況だったようで、こんな文章がありました。「まだ私費留学生制度でしか渡航出来なかった頃、版画の浜口君(浜口陽三)とともパリに行った。歳の暮れでパリの街は凍りついた大きな岩石の街並みだった。まだ焼けあとのままのバラック的東京からやってきた『おのぼりさん』の私の第一印象だった。この感動が日本文化と西洋文化の違いにつながるものだと、私の立体感の本質的な考えを揺れ動かすことになる。案の定、フランスでの作家の制作の根源が、ゴシックの建築美や、その彫刻美のように、量感の美しさを先行させること、量、奥行、力の美が彼らの本能的な美意識につながっていることをみせられた。」本書の最後に哲学者矢内原伊作との対談が掲載されていて、ジャコメッティのモデルを勤めた矢内原伊作の彫刻に対する考え方が印象的でした。「ジャコメッティという人は自分の仕事について非常に意識的というか、自覚的というか、自分が今何をやっていて、どういう所にいて、これから何をするかといったことを常に自問していた。~略~ジャコメッティの彫刻というのは絵に近い彫刻だと思うんです。つまり、物そのものをつくるというより、何かを見られた物、見たものをつくるという点で、物をつくるというより、ヴィジョンあるいはイマージュをつくるという点で絵に近い。」また、それに対し著者はこんなことを述べていました。「私が鳩をつくったり鴉をつくったりするのは、ジャコメッティの仕事から自分のあり方を見詰めようとしているからじゃないかと思うんです。~略~私の思想としては、先刻言ったように、我々が呼吸しているのと同じように、存在する物は絶えずバランスをとっている。これが基本です。バランスが崩れると、人間死んでしまうわけです。」彫刻家柳原義達は渡仏した時に、彫刻本来の造形を通して、生命の何たるかと掴んで活動を展開したのだろうと思います。私にとっても本書は心に迫る箇所が多い書籍でした。