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葉山の「若林奮 新収蔵作品」展
先日、神奈川県立近代美術館葉山館に行って「若林奮 新収蔵作品」展を見てきました。彫刻家若林奮は、私の学生時代に初めて知った人で、大学では教壇に立っていましたが、私の在籍していた彫刻学科ではなく、共通彫塑研究室にいられたため、私は直接指導を受けることはありませんでした。それでも野外彫刻展に出品されていた若林先生の不可思議な世界に、私は興味津々でその難解に思えた思索を読み解こうとしていました。当時、学生であった私は習作として人体塑造をやっていて、在籍中に空間認識に至ることがなかったのですが、その中でも現代彫刻の在り方を問う若林ワールドに関心がありました。県立近代美術館では若林奮コレクションの充実を示すために「新収蔵作品」展を開催していたので見に行ってきましたが、改めて彫刻を通した哲学を再確認することになりました。「若林奮の作品は、彫刻を介して、世界を感じ、知覚するための模索の作業の結実にほかなりません。世界の一部である人間には、世界全体を俯瞰し客観的に捉える術はなく、またそのような居場所もない。自分自身をしっかり感じ取り、認識するための、一つの手だてとして彫刻もまたやはり世界の一部として存在する。」(水沢勉著 本館館長)という解説に若林ワールドが凝縮されているように思いました。展示されていたのは比較的旧知の雰囲気を纏った作品ばかりだったのですが、このコレクション全体を提供した河合孝典氏の年賀状収集が面白いなぁと思いました。「前期の図柄は、当時の作家の関心を示して興味深いものですが、後期になるとハンカチを振るという、言わば振動を表した同一の図柄です。この頃になると、芸術家としての時間を1年ごとに刻むという作業そのものに意識が向いていったのではないでしょうか。結果としてそれが『芸術家が所有した時間』の表現にたどり着いていると思います。」(河合孝典著)年賀状をデビューの頃からずっと保管しているあたりが若林先生らしいなぁと思いました。