Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「世界像」について
「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」(アンリ・フォション著 原章二訳 白水社)の「第8章 世界像」についてのまとめを行います。この章には建築、風景、時という3つの単元があります。まず建築ですが、「ピエロが絵に描いた建築は、建築家のものとしても価値があるとともに、知性と感性を同時に満足させることによって、人間に平安をもたらす画家の建築であった。たとえば、モザイクの床を配した《キリスト鞭打ち》の部屋、『受胎告知』(《サンタントニオの多翼祭壇画》)のトスカーナ風の柱廊、そして『シバの女王とソロモン王の会見』の場のコリント様式の柱廊を見よう。そこではつねに、野の風景と人間の建物とが巧みに配合されている。」とありました。次に風景です。「《ウルビーノ公夫妻二連肖像画》の背後にひろがる風景を見てみよう。そこにあるのは、現実とは思えないほど魅力的な風景である。流れる雲や翔ぶ鳥まで静止状態で定着されたようなその光景に、私たちはめまいを起こし、深い淵へひき込まれてゆく。」本書には大きな図版が掲載されていて、広大な風景の中を歩む馬車が描かれていました。私は風景画というより、そこにあるもの全てにモニュメンタルな感じをもち、安定した画面になっていると思いました。最後に時ですが、光の扱いに注目しました。「ピエロの場合は、ロンギの言葉を借りれば、超越的で理知的な時、つまり陽が天頂に達する真昼時であった。それはむしろ不動の時、私たちの文字盤には見出されない時であるといった方がよいかもしれない。白い大理石の聖堂内部、上方の開口部から、やわらかな光が降りそそぎ、驚くべき荘厳さを四囲にもたらす時である。空は軽やかでしかも深い青。それをときおり眩い百光が侵食する。すると、一種のメランコリックな精気があたりに漲る…。これがピエロの時であった。」今回はここまでにします。