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千葉市原の「メヒコの衝撃」展
昨日、千葉県市原市にある市原湖畔美術館に「メヒコの衝撃」展を見に行きました。今年はメキシコ独立200周年になるそうで、メキシコと縁のある日本人芸術家8人による大規模な展覧会を見て、メキシコの独特な風土が日本人に与えた影響力を感じました。メキシコと言えば私は巨大な壁画運動を思い出します。図録からこんな文章を引用いたします。「暗黒の300年間、先住民が崇めていた神像は粉々に砕かれ、神殿は徹底的に破壊され、埋められ、その上にカトリックの寺院や副王の宮殿が建立された。しかし、その文化は脈々と生き続けた。文化革命運動は、その文化遺産に社会革命の精神を吹き込み、更に推進しようとしたのである。その中心となったのが壁画運動であり、それを牽引したのがディエゴ・リベラ、ホセ・クレメンテ・オロスコ、ダビッド・アルファロ・シケイロスだった。」日本人8人のうち、まず取り上げたいのは北川民次です。「豪胆な彼は、メキシコ各地を聖画商人などしながら旅した後、チェルブスコ美術学校『芸術家の家』でフリーダ・カーロらと共に1年ほど学び、メキシコ・ルネサンスのもうひとつの文化政策の柱であった『野外美術学校』の運営に1925年から参加する。それは新しい美術教育の試みであり、美術を民衆のものにする実験であった。」次に利根山光人。「利根山はメキシコ壁画運動のエッセンスを日本の文脈に移し替え、古代文明からの示唆を現代社会への問いかけとした数々の壁画、パブリックアートを展開した。」そして岡本太郎。「岡本は初めて訪れたメキシコで、『メキシコというのは、なんて怪しからん所だ。何千年も前から断りもなく、私のイミテーションを作っているなんて』と語る。」漫画家水木しげるはメキシコで収集した仮面を展示していました。「水木は妖怪研究家としての顔ももち、世界各地で『冒険旅行』と称するフィールドワークを行っている。メキシコでは、インディオの呪術的な信仰世界が生き生きと残る南部オアハカ州やゲレーロ州を精力的に旅した。」絵本作家スズキコージ。「人、動物、生きもの、精霊、悪魔と天使、祝祭、音楽、映画、世界の様々な場所がびっしり描き込まれたスズキの絵は、『手術台の上のミシンと蝙蝠傘』がぶっ飛んでしまうほどシュルレアリスティックで魔術的な、あらゆるものが混淆する、メキシコ的世界である。」(引用は全て前田礼著)その他に河原温や深沢幸雄、小田香の作品がありました。メキシコ本国の壁画の迫力と変わらない躍動感のある作品が、8人8通りの表現方法でところ狭しと展示されていた空間は、異様な印象を私に齎せました。欧米とは源泉の異なる生命を宿した強烈な作品を見て、私もパワーを貰いました。メキシコ本国にある壁画を一度見てみたいものです。壁画を図版で紹介されているものを私は持っていますが、こればかりは本物を見ないと語れない何かがあるように思えます。