Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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新報の「評壇」より抜粋
ビジョン企画出版社より発行されている新報は、東京の美術館や博物館、画廊で開催された展覧会の評論を盛り込んだ情報誌です。執筆をしているのは美術評論家瀧悌三氏で、私の個展にも必ず来ていただいて感想を述べてくださいます。瀧氏の歯に衣着せぬ論評は、時に辛口で納得させられることが多く、私は絶大の信頼をおいています。「評壇」にあった7・8月の展覧会から私の個展に関する内容を抜粋いたします。「発掘・出土品を模した黒褐色の陶彫がメイン。円盤型で中心から放射状に扇面が連なり、その面に大中小の層状ビルが林立する。盤は半径4m余。実に異様な光景で壮観。次が中品の木彫。胴が凹み曲った長円形を4本の支柱で支え、長円形の中は線状の文様で、円、流線、放射線が絡み合い、光が当たると床に影が映り、それも鑑賞上の景色となっている。さらに陶彫の小品の箱が4点あって、それらの表面も眞四角や長方形の立体紋が施されている。見た目には、発掘品のような実在感があっても、想像架空、フィクションの世界だ。」文章に加えて「発掘~盤景~」の全面画像が掲載されていました。確かに私の作るものは若い頃に旅したエーゲ海沿岸に広がる遺跡がイメージの発端になっているので、出土された建造物を思い浮かべていただくのが、創作者と鑑賞者のイメージが一致するところです。分かり易いと言えばこれほど分かり易いものはないと思っていますが、リアルな発掘現場からどのくらい想像を羽ばたかせ、集合された陶彫部品によって、その場の空間が変容できたかが私の勝負どころと言えます。発掘された都市は完全なものはひとつもなく、風雨によってかなり欠損があって、今も崩壊が進んでいます。私は旅先で、都市の破壊された状態を初めて見たわけで、その足りない部分に何故か美しさを感じていました。左右対称に完璧に整備された建造物は、手間のかかった部分に感銘を受けますが、暫く見ているうちに退屈を覚えるのは私だけでしょうか。日本の茶の湯の器にも同じ美意識があって、完全ではないところが美しいと感じます。「評壇」に書かれていた身に余る光栄な論評の先に、私が見ている次なる景色は破壊と創造です。現在取り組んでいる新作は、どう崩壊された状態を作るのかが課題なのです。