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「韓国の仮面劇ルネサンスについて」のまとめ
「仮面ーそのパワーとメッセージ」(佐原真監修 勝又洋子編 里文出版)の「韓国の仮面劇ルネサンスについて」をまとめます。韓国のタルチュム(仮面劇)はどんなものでしょうか。「陽気で洒脱でありながら、やはり卑俗でもある、その自在な笑いが放つタルチュムの強烈な個性は、劇としての構造そのものが、即興的に話の内容を変えたりつけくわえたりすることができる、オムニバス形式にちかいひらかれた構成をとっていることにもあらわれている。しかしそれは劇構造などをいう以前に、音やしぐさや舞いや仮面のかたちなど、身体の感覚で直裁に感じとれるさまざまな工夫のなかに、いきいきとはたらいているのだ。」これを読むと韓国の仮面劇は、日本の静に比べて動の雰囲気を感じさせます。「ほんらい仮面劇にもちいられた面は演戯の終了後に、そのつど火に投じられたという。19世紀末より前につくられた古い面がほとんど残っていないのはそのためだ。そして、それにもかかわらずタルチュムがすたれなかったのは、演戯のたびに新たに面がつくられたからである。~略~『タル』には『面』という意味のほかに頉という字を当てて、『変事、故障、病気、祟り』などの意味がある。そこで、病や祟りが邪鬼や魔神のしわざだと信じられていた時代から、凶事を形代に負わせて火にくべて焼き払う祭儀が、仮面を使う演戯の場に残った、という説が有力である。」韓国では社会情勢が民俗文化に及ぼすことがあったようです。「独裁に抵抗し民主化へ。民衆の生存権を。南北分断を口実とする反共軍事文化に抵抗を。-大きくいってこうした方向へと人びとの努力がつみかさねられていった。そのなかで民俗文化の新生をめざす運動は、しだいに当時の支配的な社会・文化状況にたいする対抗文化運動としての意味をもっていった。」また最近の享楽追及に対する民俗文化の在り方を書いた箇所も印象に残りました。「杖鼓や小鉦や太鼓がかき鳴らすあの明るく心うきたつリズム。仮面舞のあの躍動し人を哄笑にみちびく身ぶり。そしてあの途方もないまでに戯画化された滑稽な面の色や形のあざやかさ。それらがウムをいわさず人びとの目を引きつけたように、記憶のなかの血や涙や笑いの肉感をハッと呼び覚ます。あの音や所作や色や形状ーそれらことば以前のものたちは、前近代から何代もの命を経てわたしたちの細胞のどこかに断片なりとも記憶されているはずではないか。」それは日本も同じではないかと思いました。(引用は全て愛沢革著)