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「仮面ーそのパワーとメッセージ」読後感
「仮面ーそのパワーとメッセージ」(佐原真監修 勝又洋子編 里文出版)を読み終えました。仮面は私が昔から収集しているものですが、自分で被ることはなく、壁にはりつけてその造形を楽しんでいます。原初的なパワーが漲った朴訥な仮面を見ていると、私は創作意欲が漲ってきます。とくにアフリカやアジア各地の仮面が大好きで、アジアの仮面は現地調達で、アフリカの仮面は日本の雑貨店に行って購入しています。最近は新型コロナの影響で、旅行も散策もしなくなり、現地や雑貨店にも行けず寂しい限りですが、どうして自分が仮面に惹かれてきたのか、本書から解明できることがありました。「仮面は幾分とも身体と精神の乖離すなわち神と人との乖離が意識されるようになった頃に、その乖離を補正するために生まれたものである。顔が、その表情が身体の様々な有り様ー原初の素顔ーを自然に表現できなくなったとき、仮面は原初の素顔を象って登場してきた。」(石塚正英著)と文中にあるように仮面の源泉は身体と精神の乖離であり、「演技=芸術=非日常」という図式が示されている通り、私が仮面によって創作意欲を湧き出しているのは、こんな理由によるものではないかと考えられます。シュルレアリスムの芸術家たちも特にアフリカ系の仮面を愛していました。ピカソやモディリアーニはこの原始的なパワーを自作に取り込み、革新的な造形表現をモノにしました。あとがきにあった文章を引用いたします。「遥か古代から現代にいたるまで、形を変え、姿を変えて生き続けてきた仮面には、私たちの祖先の思いが込められている。その想いはさらなる時間と空間を超えた記憶の連鎖となって未来へと伝わってゆく。現在では、仮面の活躍は祭の場からテレビやアニメーションのキャラクターなど多様となり、スクリーンの向こう側というヴァーチャルな世界へと広がった。その様々なメッセージを読み解くために、本書では考古学的・民族学的・歴史的・演劇的な観点からのアプローチを試みた。扱った地域と分野は一部にとどまったが、日本の仮面をアジア・ヨーロッパとの位置付けで見ると、不思議な共通点が見いだされる。」(勝又洋子著)機会があれば、私はさらに多くの仮面を見てみたいし、収集したいと思っています。