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note

「美学事始」読後感
「美学事始」(神林恒道著 勁草書房)を読み終えました。本書は鞄に携帯できる程度の冊子ですが、内容は濃くて、私自身が知識として取り入れるべきものが多かったために単元ごとに細かくまとめ、その都度NOTE(ブログ)にアップしました。私は10代の終わりに美術の専門の道を歩むことを決め、工業デザインから彫刻に志望を変えました。それは学校での実技実習を伴うもので、美術的な理論は後付けになりました。私は美学という学問の存在は哲学体系のひとつとして知ったのですが、内容に関してはその何たるかを知らずにきました。本書にも折に触れて美学とは何かが書かれていましたが、改めてネットから美学に関する概要を引用してみます。「伝統的に美学は『美とは何か』という美の本質、『どのようなものが美しいのか』という美の基準、『美は何のためにあるのか』という美の価値を問題として取り組んできた。科学的に言えば、感覚的かつ感情的価値を扱う学問でもあり、ときに美的判断そのものを指すこともある。より広義には、この分野の研究者たちによって、美学は『芸術、文化及び自然に関する批評的考察』であるとも位置づけられる。」とありました。また、「美学が一つの学問として成立した歴史的背景には、18世紀に啓蒙主義の思想と自然科学の確立に伴って表面化した科学的認識と美的もしくは感覚的認識の相違が認められたことと関係している。」とあり、美学は感覚的認識とは言いながら、あくまでも西欧思想の概念から成立しています。それを明治の文明開化と同時にわが国に移植した経緯に関しては、本書に詳しく書かれていますが、当時の思想家たちの紆余曲折があって、現在も「芸術、文化及び自然に関する批評的考察」の学問として認知されているところです。現代の創作活動は、単に素材の技術的上達を求めるものではなく、現代社会における創作の意義やその捉えを具体化するもので、そのためには美学を初めとする哲学が必要になっていると私は考えています。本書が私に齎せた知識は、まだ事始に過ぎないけれども、今後の創作活動の指針を考える上で、重要なものだろうと私は思います。