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六本木の「ルートヴィヒ美術館展」
昨日のNOTE(ブログ)に新聞に掲載されたエルンスト・バルラッハの彫刻の記事について書きました。その流れで今日は「ルートヴィヒ美術館展」を取り上げます。六本木にある国立新美術館で開催されている「ルートヴィヒ美術館展」は先日見に行きましたが、私の好きなバルラッハやコルヴィッツを初めとするドイツ表現主義の作品が多く来日していました。「ルートヴィヒ美術館は1976年の創設の折より、コレクターであるルートヴィヒ夫妻に敬意を表してこの名を冠している。この美術館が収蔵を誇り、ここを訪れる誰もが、その数え切れないほどの素晴らしい作品、つまり、ポップアートから世界第3位のピカソのコレクション、ロシア・アヴァンギャルド、国際的な現代芸術にまで及ぶコレクションを目にできるのも、この夫妻のお陰と言えるのだ。」と図録にありましたが、私はなかなか日本では見られないドイツ表現主義の作品に関心を持ちました。「19世紀末から20世紀初めにかけてのドイツでは、新たな芸術表現を模索する芸術家グループが生まれ、彼らを支える画廊の活動が活発化した。中でも、1905年にドレスデンで結成された『ブリュッケ(橋)』と1912年にミュンヘンで誕生した『青騎士』は、新時代の芸術傾向を提示した点で重要である。ともに19世紀的な写実主義や印象派的な光学的視覚表現を脱しようとした点は同じだが、前者は、人間がもつ根源的かつ原始的な生命力を激しい筆致と鮮烈な色彩で表現しようとし、後者は、あらゆる芸術に通底する共通項を模索し、その過程で西洋的因習的な造形表現の超過を試みて、一部は非具象的傾向を強めた。」とある通り、原始的傾向や非具象的傾向の作品群に、若かった私は心が湧き立った思いが過ぎります。勿論現代から見れば旧知の作風ですが、その時代の革新性が感じられて、20代にドイツのミュンヘンに降り立った私は、遥々ここまでやってきたという何とも言えない感慨があったのでした。60代になった私が現在でもなお、キルヒナーやカンディンスキーを見ると、自分の原点に還っていくようで、自分が表現主義に引き寄せられた理由をもう一度確認したくなるのです。コロナが落ち着いたら、ドイツやオーストリアを再訪したい願望に駆られた「ルートヴィヒ美術館展」でした。