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「彫刻の歴史」読後感
「彫刻の歴史」(A・ゴームリー M・ゲイフォード共著 東京書籍)は彫刻家と美術評論家の対話を通して、彫刻の歴史について語っている書籍で、図版をたくさん掲載した分厚い書籍でもあります。私は書店で数多い図版に魅せられて本書を購入しました。歴史と言っても時系列に述べられたものではなく、18項目いずれも先史時代から現代までを、テーマに従って述べられていて、自由闊達な歴史談義になっているのです。登場する作品や彫刻家の中には私が知らなかったものや人物もあり、とりわけ未知なる世界の古代遺跡に魅せられていました。本書は定番となっている彫刻の歴史にも一石を投じていて、現代を生きる彫刻家と美術評論家の個人的な感想や意見などが述べられていて、時折偏った論考もあるように思われますが、それも含めて楽しく読むことができました。2人の対話があらゆる分野に膨らんでいくことが多く、項目ごとにまとめることが至難の技で、それのため私は留意した台詞をピックアップすることに終始してしまいました。取り上げている作品や彫刻家については私もつい偏ってしまい、自分の趣味趣向が反映してしまう結果になりました。そのことで自分が確認したこともあれば、新しい視点を教えられたこともありました。とくに現代彫刻に関しては私がもつ情報が少なく、世界にはこんな表現をする作家がいるのか、また作家のスケールの大きさにも驚かされました。私は自身の創作では社会的ニーズがないと悲観していましたが、本書を読んでみると決してそんなことはなく、大きく捉えれば歴史の中で彫刻は重要な役割を担っていることも分かりました。現代が構築した社会的システムの中では、そこに流れていかない彫刻の意思が浮かび上がって、私は絶大な勇気をいただきました。