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週末 渋谷の「竹内栖鳳展」へ
週末になり、工房に出入りしている若いスタッフ2人と、前から約束をしていた展覧会鑑賞に出かけました。場所は東京渋谷にある山種美術館で、そこでは日本画の巨匠竹内栖鳳の展覧会をやっていたのでした。私は2013年に東京国立近代美術館で開催していた大掛かりな「竹内栖鳳展」を見に行っています。NOTE(ブログ)の2013年10月17日の記述に「ライオンや象、鹿、狐、狸、猫、雀に至るまで動物の描写は特筆に値する表現力をもち、その風貌や動勢、毛の質感さえ見事な筆致を見せていました。西洋画の陰影を取り込んだ作品は、当時の日本画壇で驚かれたのではないかと推察しています。とりわけローマやベニスの構築的な建築描写と日本画的な樹木の描写が相まって統一されていたのが印象に残りました。」と私は些か興奮気味に書いていました。今回見てきた「竹内栖鳳展」は比較的小品が多かったと思いますが、それでも中国の蘇州を描いた「城外風景」や愛らしい動物を描いた「班猫」や「鴨雛」があり、竹内栖鳳らしさを感じさせてくれる作品が展示されていました。西洋絵画の描写方法を取り込んだ竹内栖鳳の作風に、私たち戦後世代は西洋の図工美術教育を受けた者として、親近感を感じたことは否めません。つまり分かり易く形態が視覚に入ってくるのです。勿論日本画独特な線の輪郭も美しいと感じていますが、洋の東西を問わず、その感興が齎すものに私たちは魅入ってしまうのです。図録にこんな竹内栖鳳の言葉が掲載されていました。「日本画家に取っても西洋画に学ぶべきところが全然ないではない、広く泰西の名画を見、之を我に比較し、深く之を研究することが肝要である。例えば印象派などの作に、仕上げの或程度で止めた処に、或る感じを現わす遣り方と、日本画の或程度で仕上げを止めた処に、或情感を出すという様なところに、互に共通の点があるかと思う。~略~又一方から考えれば、ひたすらに西洋画の後ばかりを追うことをせずに、かえって其裏を裏をと行く方が、かえって東洋画の特色の面白い処に達し得るかも知れぬ。例えば、向うの画に陰影というものがあれば、此方では精々陰影を除いて行く、こんな風にしてかえって面白い処へ達しはせぬか。」竹内栖鳳は1900年のパリ万国博覧会視察でヨーロッパを訪れ、翌年帰国しています。そこで感じた西洋絵画の真髄と日本画の現状を見据えて、自らの作風を考えたのだろうと察しています。竹内栖鳳は「面白い処に達する」という絵画の主眼を常に見つめてきた巨匠と言えます。