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「溶ける魚」31・32について
「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」(アンドレ・ブルトン著 巖谷國士訳 岩波書店)の「溶ける魚」の31と32の単元の中で、気に留めた詩文をピックアップいたします。まず単元31ですが、この単元は劇形式になっていて、登場人物サタンの台詞を取り上げます。「わたくしは、みごとにダイヴィングをして人間の意識のなかにもぐりこみ、奇態な偶然、異形の花々、不可思議な叫びなどを、そこにはびこらせました。その日からというもの、父親はもう息子とともにいるだけではなくなりました。父子のあいだの空気の裂け目が、一匹のホタルをとまらせている扇に抜け道をあたえたのでした。各所の工場のなかで、わたくしはありとあらゆる手段を講じて、労働の分割をおしすすめようとこれつとめました結果、こんにちでは、たとえば一個の爪みがきをつくりだすのにも、労働者たちのグループが、昼も夜も、ある者は腹ばいになり、ある者は梯子にのぼって、はたらきつづけることが必要です。そのあいだに、女工たちは野原に出て花束をつくり、他の者たちはせっせと手紙を書きつづっているのですが、その手紙には、おなじ時制のおなじ動詞、おなじ優しいきまり文句が、たえずくりかえされるようになっています。」単元32に移ります。「私たちの最良の時がすごされたのは浴室のなかである。その部屋は寝室とおなじ階にあった。『ナイフで切りたいほどの』厚い水蒸気があちこちにひろがり、とくに洗面台のまわりでは、なにひとつ手でつかむことができないありさまだった。たくさんの化粧用具がわけもわからないままならんでいた。ある日のこと、朝の八時ごろ、なにかしら高次な不安にみたされているこの部屋のなかへと、私たちの身にせまりはじめている神秘な運命をきっと味わえることを期待しながら、まず私がはいってゆき、そこで大きな翼の音と、ついで間髪をいれず窓ガラスのおちる音をきいたとき、私のおどろきはどれほどのものだったろうか、その窓ガラスはいわゆる『オーロラ』の色がきわだっていたが、割れずにのこった窓ガラスのほうは、反対にほんのりと青みをおびていた。」以上で全32篇から成る「溶ける魚」を掻い摘んで記述してきました。これは私独自の感覚による詩文選抜によるもので、ブルトン世界の全てを捉えているとは言い難いものがあります。NOTE(ブログ)を読んでくださっている方々には前後の文脈もなく突如として引用される詩文に混乱された方もいらっしゃったと思います。これは小説ではなく長い詩文によるものなので、私は理解に苦しむ箇所も多々ありました。さらに感性を磨ければ、それに呼応する解釈も可能だったかもしれません。雑駁なNOTE(ブログ)の内容になってしまったことをお詫びいたします。