Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「上昇記号」(後)について
「アンドレ・ブルトン伝」(アンリ・べアール著 塚原史・谷正親訳 思潮社)の「第Ⅵ部 沸き立つモラル」の「第一章 上昇記号」(後)についてまとめます。「アルベルト・アインシュタインの核戦争の危機に関する発言に衝撃を受けたブルトンは、知性を破滅に導いたシステムの基盤の上にかつての諸政党が再建されるのを見て憤慨し、あらたな出口につうじる窓を探していた。彼は1948年にアンティーブで『柱時計の中のランプ』を執筆した時、ロベール・サラザックが提唱した、既成の教条や政党から離れた世界連邦主義者の組織である『人間戦線』に個人として参加することを予告していた。彼は、4月30日にパリの園芸家ホールで、この組織にとって最初の公開討論会のためにスピーチをした。この組織はやがて『世界市民』と名乗ることになる。」次にシュルレアリスムの理念についての記述がありました。「シュルレアリスムはたとえ組織がなくなっても、それ自身の未来をもつのではないだろうか。それは思想として人びとの間に漂うのではないだろうか。シュルレアリスムは、愛と自由と、宗教性抜きの聖なるものの観念によって、時の感覚を変えることに寄与したのではなかっただろうか。」芸術と科学についてのブルトンの思索も書かれていました。「ジャーナリストのパリノーは『アール』誌上で、芸術と科学の関係についてのアンケートを行なった。ブルトンの回答は、『いったい何故だろう。科学と芸術はたがいに冷ややかに見つめ合うことをすぐにやめられるだろうとは、わたしには思えないのだ。文明が、ルソーとフーリエの後で、不必要かつ全く常軌を逸していると思われる方向にこのまま進んで行くなら、科学と芸術の迷宮のように交錯した二本の道が同一の点に向かうことなど、どうしたら可能になるのか、私にはわからない。』というはっきりしたものだった。フロイトは芸術家との対話を避けているし、プリミティヴ・アートに興味のある社会学者たちは芸術とは無縁の進歩の概念を抱いているとブルトンは考えていた。」今回はここまでにします。