Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 固定と流動について
日曜日の工房には、最近では定番になった後輩の彫刻家がやってきて、自らの制作に真摯に向き合っていました。昼食時間に彼と何気なく話をしているうちに、話題は当然のように彫刻のことになりました。私は気兼ねすることなく彼と気儘に話し合い、それによって自分の考え方がまとまっていくことがあります。彼も一方的に話を聞くだけではなく、積極的に彫刻の在り方に関わってくれるので、私としては有難い存在なのです。私の新作は同じサイズの陶彫立方体を数多く作っているのですが、展示のやり方を従来と変えていこうとしています。私としてはこれは大きな変化で、今まで試してみたかった方法なのです。従来の私の作品は多くの陶彫部品を順次組み立てていくもので、言わば完成図を予め用意した固定的な造形でした。図録撮影の時や個展の展示の時も同じように組み立てていったのですが、私の気に入ったところは周囲の環境によって同じ作品が違って見えるところでした。私はそれだけでも十分満足をしていましたが、今年の新作に関しては環境の変化どころか、全体完成図さえありません。陶彫立方体をどのように積んでいくのか、またはバラバラに点在させるのか、その場の環境を見て臨機応変に変えていくのです。最初の取り掛かりは私自身の考え方で設置をしていきますが、そのうちスタッフの意見を反映させていきます。つまり流動的な造形です。当然、図録用撮影の野外工房や室内工房、ギャラリーでの設置方法も変わってきます。積み方や点在の仕方はその場で変わってくるのです。どうしてそんなことを考えたのかというと、私は最小の物質で最大の空間を創出させたいと昔から考えていたからです。私にとって彫刻表現は空間表現でもあるのです。場を作ること、場を作る装置が私にしてみれば彫刻された素材なのです。私が昔からやってきた集合彫刻は、それが可能なのです。そんなことを今日は彼に伝えてみたかったのでした。