Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「発掘~坪庭~」について
今年の中規模作品のイメージは坪庭です。もともと「発掘シリーズ」のイメージの発端は、エーゲ海に広がる西洋文明の発祥となった都市空間でしたが、今回は極めて小さな空間を対象にしました。坪庭は亡父が造園業をやっていた頃に、私は見習いの植木職人の一人として坪庭を作成したことを思い出します。どこかのホテルの中庭に、石や玉砂利や植木を運んで小さな庭を施工しましたが、床の養生やら材料の運搬が大変で、数人の職人で難儀をしたことを覚えています。坪庭は家屋が建て込んだ日本の住宅事情に憩いを齎す小さな庭園のことで、日本が起源ではないかと思います。元来、平安時代の貴族の屋敷における渡り廊下に面した空間を「壺」と呼んでいたようです。時代が進んで、京都の長屋建築において、陽が当たりにくく、また風も通りにくい塀や垣根に囲まれた空間に植栽をして、さらに石や苔を配して生活に潤いを齎せたものを坪庭と呼んだようです。教職にあった時に、修学旅行の引率で訪れた京都で、私は屡々何必館・京都現代美術館に行って、その最上階にある「光庭」をよく鑑賞していました。その小さな空間にホッと溜息をついたことが今も記憶にあります。「発掘~坪庭~」は今年私が亡き両親の実家を解体して、そこに集合住宅を建てたことが制作の発端になりました。建築を請け負った業者から1階の階段下の空間に何か立体造形を置けないかと相談され、ここは坪庭がいいのではないかと思い至ったのでした。大きさは一畳程度で、陶彫を複数配置して、玉砂利で埋め尽くそうと考えました。ギャラリーでの個展終了時に集合住宅に作品を移動して試しに置いてみるつもりです。