Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

「像をうつす」を読み始める
「像をうつす」(金井直著 赤々舎)を今日から読み始めます。本書はどこかの美術館のギャラリーショップで購入しました。頁を捲ると彫刻家ブランクーシの作品写真がたくさん出てきて、これはどういう書籍なのか確かめずに手に入れてしまいました。副題に「複製技術時代の彫刻と写真」とあって、彫刻と写真という一般的に考えれば両極にある媒体について考察しているものらしく、それならば私の彫刻も懇意にしているカメラマンに撮影してもらっている経緯もあるので、何か新鮮な論考があるのではないかと期待しています。序論に「彫刻と写真の交差」という小単元があって、面白い文章がありました。「彫刻と写真の類似、類縁として、まず述べておきたいのは、光、そして視点への関心だ。西洋美術史を振り返ると、それらはときに彫刻の弱点と結びつけて語られてきた。たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)は『〔彫刻〕は一定の、すなわち上からの光に左右されるが、〔絵画〕はいたるところに光と影とをたずさえてゆく』がゆえに、『〔絵画〕は〔彫刻〕よりも大きな知的論究を要し、より偉大なる技術乃至驚異に属する』というパラゴーネ(諸芸術比較)をおこなう。その判断の正否はともあれ、絵画であれば徹頭徹尾画家の意にそって固定される光と視点が(ルネサンスにおける陰影法と透視図法の充実)、彫刻家にとっては外的要因に左右される悩みの種であったということには首肯ける。」光や視点のことにある基準を設けて拘れば、絵画の優位性はこの通りだと考えたいところですが、今後主題となる彫刻と写真の類似や類縁をどう扱っていくのか、本書の分析を待ちたいところです。序文の最後にはこんな文章もありました。「彫刻と写真は、その形式・制作・受容すべての面において、特筆すべき共通性や有意の類縁性を示す。かつてロダンは自らの彫刻を撮影させ、その写真上にドローイングを施して制作上の助けとしたが、そこにもまた大芸術家の直観と創意以上の因縁があったわけだ。また、後にジュゼッペ・ペノーネ(1947-)が二つのジャンルの境界線を押し開くことで、魅力ある作品を生みだしえたのも、そもそも両者の類縁性の高さがあればこそだったのである。」今回はここまでにします。