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「人間存在の風土的規定」について
「風土」(和辻哲郎著 岩波書店)の「第一章 風土の基礎理論」の「2 人間存在の風土的規定」について、気を留めた箇所を選びます。「人は死に、人の間は変わる、しかし絶えず死に変わりつつ、人は生き人の間は続いている。それは絶えず終わることにおいて絶えず続くのである。個人の立場から見て『死への存在』であることは、社会の立場からは『生への存在』である。そうして人間存在は個人的・社会的なのである。が、歴史性のみが社会的存在の構造なのではない。風土性もまた社会的存在の構造であり、そうして歴史性と離すことのできないものである。歴史性と風土性との合一においていわば歴史は肉体を獲得する。」さて、風土的規定とは何か、こんな文章を引用いたします。「着物は暖かくあるいは涼しく、厚くあるいは薄く、種々の形において製作せられる。羊毛、綿花、絹というごときものが衣服の材料として社会的に見いだされてくる。かく考えれば道具が一般に風土的規定と密接な連関を持つことは明白だと言わねばならぬ。従って道具が我々にとって最も手近なものであるということは、風土的規定が対象成立の最初の契機をなすということにほかならぬであろう。」風土的規定を考えると、当初私がイメージしていた単なる気候風土という一面ではなく、人間の営みのさまざまな場面を通じて、多角的に風土の概念を捉える必要があり、そうなれば風土を中心とする学問体系の裾野は広がるばかりです。「かつてヘルデルは『生ける自然』の『解釈』からして『人間の精神の風土学』を作ろうとした。そうしてそれはカントが批評したように、学的労作ではなくして詩人的想像の産物に類したものとなってしまった。この危険は風土を根本的に考察しようとする者を常に脅かしている。しかしそれにもかかわらず風土の問題は根本的に取り扱われねばならぬのである。歴史の世界の考察が真に具体性を得るためにも、風土的特性の問題は根源的に明らかにされなくてはならない。」今回はここまでにします。