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「古寺巡礼」を読み始める
まだ「風土」(和辻哲郎著 岩波書店)を読んでいる途中ですが、私は毎日、東京銀座のギャラリー通いがあるため、文庫本を携帯することにして、同じ著者の「古寺巡礼」(和辻哲郎著 岩波文庫)を読み始めました。「古寺巡礼」は古い出版ですが、最近購入しました。私は昔から乱読の悪癖がありましたが、若い頃に比べると落ち着いてきたように思っています。同じ著者の2種類の書籍を読むのは私としては珍しいことです。「風土」はその論理思考や文体からして、自宅でじっくり読むのが相応しいと感じています。それに比べて「古寺巡礼」は旅先の印象記なので、比較的気楽に読めるかなぁと思っています。とりわけ私は仏像が好きなので、「古寺巡礼」はその興味関心を満たしてくれそうで、楽しみでワクワクしています。さっそくこんな文章が私を虜にしました。「種族が異なるに従って、理想の顔や体格がどういうふうに変わって来るかという問題は、文化の伝播と連関して、興味のある問題である。たとえば仏画は、東へ来れば来るほど清らかに気高くなって行くが、このことは仏教の教義の変遷とどう関係するか。あるいはまた当時の諸民族の内心の要求や問題とどう関係するか。これらは考究に値する問題であろう。~略~一体あの弥勒は我が国の仏像のうちで最も著しくガンダーラの様式を現わしているものである。その肉づけの写実的なことと言い、その重々しい、大きい衣のひだの、小気味のいい大胆さ自由さと言い、シナ風の装飾化の動機にわずらわされずに、端的に人体を作り出している。特に塑像としての可能性は、極度に生かし切ってあると思う。我が国の仏像で西洋彫刻に最も近いものは恐らくこれである。しかもそのギリシャ的な様式にもかかわらず、この仏の与える印象は完全に仏教的である。」これは広隆寺にある弥勒菩薩像で、修学旅行でよく訪れる定番の仏像です。私も教職にいた時に修学旅行の引率で度々見ていました。威厳のある美しさに仕事の多忙さを忘れさせてくれた仏像で、どんなヤンチャな生徒でも弥勒菩薩像の前では静かに鑑賞していました。美しさを感じる心には理屈はなく、ふと足を止めてしまう魅力があるのです。