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映画「君たちはどう生きるか」雑感
昨日、家内と映画「君たちはどう生きるか」を観に行きました。宣伝をしない、事前情報もないという異色な映画で、ネットでは封切りからさまざまな意見が飛び交っていました。まず内容が分からないという感想から、宮崎駿ワールドを十分楽しめたという感想まで、本作には真逆な評価が存在しています。加えて図録も数日前に販売されていたので手に入れてみましたが、制作者サイドの解説はなく、評論家の論考もありませんでした。簡単なメモ書きがある程度で、普通の図録を期待していた私はガッカリしました。昨日は日曜日だったためか、観客の入りはまずまずで、スタジオジブリのブランド力を見せつけられた格好でした。私はジブリのアニメーションは結構見ている方で、動画の美しさに対しては毎回感心させられています。とりわけ手描きで表現していることに関しては楽しめる要素満載です。本作も期待を裏切らない美しさがあって、手間暇かかった場面では心に響くものがありました。これは宮崎監督の少年時代の思い出を描いたものかもしれず、昭和初期の日本の家屋が立ち並ぶ風景が丁寧に描かれていました。「風立ちぬ」を彷彿とさせる導入部がありましたが、物語構成は「千と千尋の神隠し」に近いかなぁと思いました。発想が飛躍するところは、自分としてはそんなに破天荒とは感じていないし、寧ろファンタジーを混ぜ込んだ少年の成長物語として考えれば、既定路線のジブリ映画だろうと思います。過去のジブリ作品のオマージュもあって、宮崎ワールドお馴染みのキャラクターたちが跋扈する場面は結構楽しめました。内容が分からないと思っている人たちは、自身の中で辻褄を合わせようと考えすぎているのではないでしょうか。アートをはじめとする表現作品には理屈に合わないものが数多くあります。作者が作りたいように作れば、その説明は作者自身にも難しく、鑑賞者がそれぞれの感性をもって読み解いていくのが正解と考えます。つまり正解は人の数だけ存在するのです。商業的に成功しなければならない映画は、観客に考えさせることが少なく、映像なり台詞なりで説明するので、一方的に観客に情報を与えてきました。本作は「君たちはどう生きるか」に対して「皆さんはどう考えるか」を提供した映画だったように思います。