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六本木の「激動の時代 幕末明治の絵師たち」展
昨日、東京六本木にあるサントリー美術館で開催中の「激動の時代 幕末明治の絵師たち」展を見てきました。日本が鎖国から解放され、江戸から明治にかけての美術界の動向を伝えている本展は、まさに激動の時代を象徴する多様な作品群が展示されていました。図録より時代背景を引用いたします。「過去の日本美術史において、幕末明治期は、近世(江戸時代)と近代(明治時代)という二つの時代のはざまであったためか、評価は決して高くなく、等閑視されることさえあった。例えば、幕末の浮世絵は『頽廃的』といったマイナスイメージで語られていた。しかし、近年、特に1990年以降、江戸時代から明治時代のつながりを考慮する研究が増え、様々な角度から幕末明治期の絵画の研究が進められている。~略~幕末明治は、日本美術史の制度が確立する以前の、江戸と近代が断絶していない混沌とした時代を反映したかのような、熱気あふれる美術(と呼べないようなものも含む)が生まれた時代として注目を集めるようになっている。」この激動の時代を評価する動きは最近になって始まったようですが、私は絵師たちの力量を感じ取って、東洋と西洋が混在している様子が面白いと思いました。狩野派について書かれた箇所を引用いたします。「江戸画壇の軸となったのは、江戸幕府の御用絵師となった狩野派である。瀟洒淡白な画風を形成した江戸狩野派は、鍛冶橋・木挽町・中橋・浜町の奥絵師四家を中心に、表絵師や諸藩の御用絵師を従える巨大な組織として発展する。~略~狩野派を学んだ絵師のなかでは狩野一信(1816-63)が注目される。~略~増上寺に奉納された全百幅からなる『五百羅漢図』は一信の代表作として名高い。古画をよく学び、中世の羅漢図に基づきながら、各所に西洋的な遠近法や陰影法を取り入れ、強烈な迫力をもつ極彩色の画面がつくり出されている。」(引用は全て内田洸著)展示は緻密な銅版画を作り上げた安田雷洲や浮世絵の歌川国芳や河鍋暁斎らが異彩を放っていました。まだまだ注目に値する絵師も多く、こうした背景には豊饒な世界観があるように思えました。貪欲に多様な美的価値を取り入れようとした芸術家たちは、世界的に見ても決して劣るものではなく、寧ろ日本人の持つ魑魅魍魎の奇怪さが、私には理解できるのです。現代のアニメにも鬼や呪術が登場しますが、根の部分に同じものがあるように思えてなりません。