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文化の日 映画「M・マルソー 沈黙のアート」雑感
今日は文化の日です。朝から工房で制作三昧でしたが、夕方から横浜の中心地にあるミニシアターに行こうと家内と決めていました。観たのは「マルセル・マルソー 沈黙のアート」で、パントマイムでは世界的に知られたパフォーマーを扱ったドキュメンタリー映画でした。マルソーは白塗りメイクでシルクハットに赤いバラをつけた独特な衣装で知られた人で、私もテレビ等で見たことがありました。私は当初、マルソーの本流であるパントマイムをたっぷり流してくれるものと思っていたのですが、映画はマルソーの妻、娘、孫が語る本人の生きざまを浮き彫りにするもので、マルソーの身体表現は部分的にしか出てきませんでした。それもそのはずでパントマイムに息づく抵抗の精神があるからこそ、マルソーの演技は国や時代を超えて私たちに訴えてくるのです。マルソーはユダヤ人であり、父がアウシュヴィッツで処刑されていました。第二次世界大戦で彼はレジスタンス運動に身を投じ、多くのユダヤ人孤児をスイスに逃がしていた事実を知りました。映画の中で私が印象的だったのは、マルソーが影響をうけた俳優がチャップリンだったこと、逆に影響を与えたアーティストがマイケル・ジャクソンだったことでした。チャップリンは彼の映画の中で社会に対する抵抗や風刺を喜劇要素たっぷりに描いており、マルソーのパフォーマンスはそこに由来すると思いました。マイケル・ジャクソンのムーンウォークはマルソーの動きから生まれたもので、その動きを観察すると成程と思えるものがありました。現代はダンスミュージックが盛んに行われていますが、その原点とも言うべきパフォーマンスを知ったことで、映画から得られた収穫があったと私は考えました。