Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

映画「鬼太郎誕生」雑感
今日、午前中は工房で陶彫制作をやっていました。午後になって家内を誘い、エンターティメント系の映画館に出かけました。先日の新聞評で現在上映中のアニメ作品が骨太で良いという記事を読んで、早速観に行こうと思ったのですが、昔からお馴染みのアニメだったために躊躇もありました。「ゲゲゲの鬼太郎」は妖怪漫画として勧善懲悪のキャラクターが登場するもので、ファミリー向けのものではないかと思っていました。ところが、内容は戦中戦後の復興期に、都市開発から取り残された村に伝承される摩訶不思議な現象を通して、人間の心に巣食うエゴイズムを浮き彫りにしたもので、意外に面白い要素がたっぷり仕込んであって満足を覚えました。私が鬼太郎というキャラクターを知ったのは結構古く、小学校時代の友人が貸本屋から借りた本に「墓場鬼太郎」として登場したのを読んでいたのでした。映画を観ていると寧ろ初期の頃の鬼太郎に近いものを感じました。とくに映画の最後に墓場の土葬から現れる赤子としての鬼太郎が登場する場面は、まさに初期の鬼太郎なのでした。作者の水木しげる氏の戦争体験も盛り込まれていて、主人公が戦争の生き残りとして内面に秘めたものがあるところが物語をリアルにしていました。物語は東京から薬品調査として村にやってきて利権を得ようとする水木というサラリーマンが、旅の途中で出会った奇妙な男とともに、村で遭遇する因業に立ち向かうもので、奇妙な男は鬼太郎の父であり、行方不明となった妻(つまり鬼太郎の母)を探しにやってきたのでした。この映画は子ども向けではなく、日本が戦後の混乱期から高度成長をする昭和31年の混沌とした状況を描いていて、新聞評の骨太という印象はこのことかなと思いました。因みに私が生まれたのは昭和31年です。そんな縁もあって、「鬼太郎誕生」を興味深く観させていただきました。