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「チェインギャング」研修
私が教職に就いて10年ほどしたら、当時の管理職から、来年度から学級担任を外れて教育相談の担当になってくれないかと言われました。横浜市では生徒指導専任という名称がついていて、反社会的行動をとる生徒には警察の生活安全課との連携によって更生させていく仕事がありました。非社会的な生徒には児童相談所や福祉関連の行政部署と連携をして相談をしていました。学校が抱える課題が学校だけでは解決しないことが多く、まず担当が生徒達の相談役になり、他機関に繋げていくのでした。そんな時に専任研修が市教育委員会で組まれ、ある歌を聴いてグループで話し合う機会がありました。その歌がザ・ブルーハーツが歌う「チェインギャング」という歌でした。「人をだましたりするのは とってもいけないことです モノを盗んだりするのは とってもいけないことです それでも僕はだましたり モノを盗んだりしてきた 世界が歪んでいるのは 僕のしわざかもしれない」これは歌のフレーズの一部ですが、私はこれを契機にザ・ブルーハーツのファンになり、ほとんどのCDを購入しています。最近、夜の食卓でRECORD制作中にこの歌を聴くことがあり、当時の生徒との相談内容を思い出し、複雑な思いに駆られました。「世界が歪んでいるのは 僕のしわざかもしれない」生徒の中には親との葛藤により家庭に居場所がなく、学校に行けば他の生徒達から疎外を受けていた子がいました。全て自分のせいだと言っていて、死んだ方がマシと生徒がボソっと呟いた時、私は悩みに悩みました。自己肯定感が底辺にまで落ちてしまう状況をどうしたらいいのか、生徒が時折無口になることが怖くて、相談を何度もやっていました。この子はまだ私に心を打ち明けているので、ここで何とかならないものか、私は自分にも虚無感を感じていました。私たち教職員には限界があります。こうすれば救えるかもしれないと思っていても、他機関に任せれば、この子はきっと心を閉ざしてしまうだろうと察することが怖かったのです。それでも私は決断をして、学年職員や管理職と情報共有をしました。この子は職に就いたことで自立し、今も元気に生きていることを聞き及んで、内心ホッとしています。歌によって思い出されるあの日あの時の心境。自分もいろいろな思いを抱えて生きてきたなぁと感じるこの頃です。