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「アンニーバレ・カラッチ 」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)の第2章「1600年前後のローマ画壇とカラヴァッジョ」の中の「4 アンニーバレ・カラッチ 」の気になった箇所を取り上げます。以前のNOTE(ブログ)に書きましたが、バロック時代の美術史に弱い私は、当時活躍した画家の名前を知らず、また流派も知りません。手探り状態で本書をとつおいつ読みつつ、カラヴァッジョ以外の画家による作品を思い起こすことに難儀しています。「『革新者』カラヴァッジョとともにローマ画壇に衝撃を与えた『改革者』アンニーバレ・カラッチ は、しばしばカラヴァッジョと比較されてきた。~略~より具体的に影響があると思われるのは、アンニーバレの《聖ロクスの施し》である。1594年から95年頃に描かれたこの作品はアンニーバレのボローニャ時代の集大成といわれ、また偉大なバロックの群集構成を示す最初の作品であるともいわれる。~略~1607年にカラヴァッジョがナポリで描いた《ロザリオの聖母》にも、聖ドミニクスの持つロザリオに向かって人々が殺到する情景が見られ、このダイナミックで力強い集中する手の表現にアンニーバレの作品を研究した痕跡が認められるようである。」カラヴァッジョの絵画修業には師匠だけでなく、好敵手となる同僚などもいて、当時のローマ画壇は活気に満ちていた様子が伺えます。私の若い時に出かけたイタリアで、教会や礼拝堂に収蔵された宗教画の数々を見て回りましたが、当時はただ漫然と眺めていたに過ぎなかったことを改めて恥じています。しかしながら、その質量の多さに異文化からやってきた私は辟易していたこともありました。「若い頃からフレスコの大画面で習練していたアンニーバレと比べ、カラヴァッジョが群像処理を苦手としていたことはあきらかであり、強い明暗対比によってその弱点を隠そうとしたといってもよい。いずれにせよ、アンニーバレのモニュメンタルな《聖ロクスの施し》の記憶は、カラヴァッジョの《ロザリオの聖母》と《慈悲の七つの行い》という、1607年のふたつの大画面に投影されたと考えられるのである。」今回はここまでにします。