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新聞記事より「世に隠れること」
20付の朝日新聞「折々のことば」より、記事内容を取り上げます。「身の回りの一つ二つのものを捨てれば、かなりの程度世を捨てられるし、世から捨てられるのである。種村李弘」この言葉に著者の鷲田精一氏がコメントを寄せています。「世を避けるのに『深山幽谷』に住まう必要はない。テレビを家に置かず、名刺を持たないこと。集いの席でも口をきかずにすむし、人と会ってもすぐに忘れてもらえるとドイツ文学者は言う。何かに打ち込みたければ世に隠れること。『よく隠れた者こそよく生きた者』という古代ローマの詩人の言もある。『雨の日はソファで散歩』から。」人は人との関わりの中で仕事をし、余暇を楽しみ、生活全般わたる日々を過ごしています。ある組織に就職すれば、必ずや人とのコミュニケーションがあり、世捨て人になることは到底出来ません。収入を得なければ経済的にも困窮してしまうし、個人営業にしても周囲との関係性が仕事になっていると言っても過言ではありません。その中で自分を深めようと何かに打ち込むことはなかなか大変で、家族が寝静まった深夜に一人の時間を確保している人も少なからずいるでしょう。私は退職するまで名刺を持たざるを得なかったし、組織内の人事もやっていたので、職員とのコミュニケーションは必須でした。その頃の私の創作活動や読書は専ら深夜で、眠い眼をこすりながら自分の世界を作っていました。私にとって世に隠れることは、自ら主体的に生きていくうえで絶対に必要なことであって、自分を取り戻す貴重な時間でもあったのです。仕事に埋没しているといつの間にか時間が経って、自分は右往左往しているだけで、自分本来の存在や生き甲斐を問うことがないと、ある日忽然と気づいたのです。まだ若かった私は自分のやりたい事と仕事の二束の草鞋生活をスタートさせました。内なる心に「深山幽谷」を作ることが、現在の私に繋がっていると思っています。