Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

「鍵と囚人」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)の「第9章 犠牲の血 」の「3 鍵と囚人」の気になった箇所を取り上げます。本単元も前単元の続きで「洗礼者ヨハネの斬首」に関しての論考になります。本単元では画面に描かれた鍵と囚人について述べられていました。「オスマン都市を襲撃したこれら三度の攻撃は騎士団に莫大な戦利品をもたらし、団長ヴィニャクールの治世でも最も輝かしい功績となっている。カラヴァッジョの作品で牢番がぶら下げている三本の鍵はこの三束の鍵を暗示し、騎士団の三度の英雄的な活動を象徴するものであると考えられよう。」次に画面にある格子のついた窓から見ている囚人と思わしき2人の人物についての考察です。「この二人の覗く窓は画面内でかなり大きな位置を占めており、主要人物が画面左半分に集中しているのに対し、画面右半分にはこの二人しか描かれていないことからも、この作品において、この二人の役割は大きいものと考えられる。~略~ある騎士はいったん敵のイスラム軍の手から逃れたにもかかわらず、負傷して逃げることのできなくなった仲間の騎士を助けるために引き返し、結局二人とも捕らえられて奴隷となってしまったという、わが国の広瀬中佐を思い出させるエピソードである。作品が描かれた二年前に起こったこの事件は、騎士団にとっても生々しい記憶となっていたであろう。カラヴァッジョの作品で獄窓から覗く二人の囚人は、このときの二人の騎士であることを考えれば、一人が負傷して頭に包帯を巻いているのも辻褄が合う。つまり、ここに描かれた二人の囚人は、イスラム教徒と戦って奴隷の身に落ちたマルタ騎士を代表しており、当時の状況では、こうした者を救わねばならないというメッセージを発していたと考えられるのである。」今回はここまでにします。