2024.07.19
東京銀座のギャラリーせいほうの個展に来訪される方々には、昨日のような考古学者の叔父がいたかと思えば、今日は彫刻家の師匠がやってきました。師匠からは予め連絡が入っていたので、私は多少緊張して待っていました。彫刻家池田宗弘先生は真鍮直付けという技法を駆使して、人物や猫などを作り続けている人です。その技法の効果で立体作品に量感がなく、まさに空間造形と呼ぶに相応しい構造体が丸見えになっている彫刻です。ジャコメッティのようで、それも風景を金属で線描していて、軽やかで風に吹かれるような立ち姿をしていますが、その存在感はそんな軽薄ではなく、インパクトはかなりあると私は思っています。私が大学に入学した頃、東京都美術館で開催されていた毎日現代美術展に出品されていた池田先生の「ああ‼なんという生き方」という作品は、痩せてボロボロになった猫たちが、餌の魚の骨を狙って四方八方から近づいてくる情景を真鍮直付けにしたもので、私は衝撃を受けました。具象彫刻は写実でなければならないと思っていた私は、腹に穴の空いた猫たちを見て、リアルとは何だろうと考え込んでしまったのでした。まさに空間芸術たる表現、それが心に刺さった私の彫刻観になったのでした。池田先生は今も創作に妥協をしない姿勢を貫いています。当時、ギャラリーせいほうでの池田先生の個展の手伝いをしたことが契機になって、現在の私が在るのです。池田先生の主張は昔と変わりません。久しぶりに師匠に会って話を伺うと、自分の原点が見えてきます。余計なものを剝ぎ取って、自分が主張するものを提示する、それは今もライフワークにしている池田先生の隠れキリシタンの調査にも通じているように思いました。現在の池田先生はキリスト教信者で、自ら獲得した空間芸術たる表現も宗教的なテーマに向けられています。私は物語性を排除した空間芸術たる表現を推し進めていますが、師匠とは異なるテーマも認めてくれる、師匠の度量の大きさに嬉しさを感じているのです。