2024.10.15
「抽象芸術」(マルセル・ブリヨン著 瀧口修造・大岡信・東野芳明 訳 紀伊國屋書店)の「Ⅴ 抽象絵画の主流 」の文中に出てくる多くの芸術家を今回は3人取り上げます。まず、フォンターナ。「一枚の紙やボール紙や金属板にあけた穴をならべてつくったイタリア人、ルチオ・フォンターナの《空間意想》は、やはりこの象形文字の美学からなっている。もはや明らかに、正当な意味での絵画ではないこの方法に、戯れや空想の部分があるにしても、しかしフォンターナがこうして点々とつくった星座の構成には、この芸術家が偶然にその解決に近づいた宇宙の謎についての直観がときたまひらめいている。」次にカポグロッシ。「人物や事象を表わしていたエジプトの象形文字、漸次抽象的な文字に様式化されていった原始中国の絵文字、イースター島の木に彫られた銘にみられる謎の記号、これらに反して、カポグロッシの造形的なアルファベットの象形文字は、ひたすら造形的な意味だけを持っている。それでも、この画家の単一音綴の書法が、そのために造形効果の点で、貧しくなることはない。」最後にムジーチ。「ムジーチで大切なものは、記号の意味ではなく、その造形的な生命力、その内在的な美しさ、その強烈なショックと感動を与える力である。生まれ故郷の山地にかたく根をはったこの芸術家の歩みには、理知的なものはなにもない。わざとらしいもの、計画的なものはなにもない。その辿る道すじはわれわれにはわからないが、表面に現われた一部を見ても、クレーのそれと異質ではない不思議な過程を通して、まったく自然に、自然の感情が、そっくりそのまま非自然主義的な表現のなかに残るのである。」今回取り上げた芸術家のうち、フォンターナは中高美術科の教科書や資料集に掲載されていて、「空間概念」というタイトルとともに切り裂いたキャンバスの図版がありました。鑑賞の授業でこの作品を紹介すると、生徒たちは「えぇ!」という声を上げていました。絵画の常識を破った最も分かりやすい作品で、私は生徒たちから質問攻めにあった記憶が甦ります。