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「ミケランジェロ」について・3

「芸術家列伝3」(ジョルジョ・ヴァザーリ著 田中英道・森雅彦訳)の「ミケランジェロ」について、幾つかに分けて気に留まった箇所をピックアップしていきます。今回は「モーセ」と「システィーナ礼拝堂天井画」を描く契機について取り上げます。「ミケランジェロは大理石で五尋のモーセを仕上げた。この像には、その美に匹敵できるどのような現代作品もないだろうし、古代のものでも同じようなものはないだろう。モーセはいとも荘重な態度で坐り、片手に持つ石版の上に腕を置き、他方の手では髭をつかんでいる。その髭は大理石でつやつやと長く作られている。彫刻としては非常な困難さを孕む髭の毛の表現も、繊細に柔らかく、ふっくらと作られ、鑿が絵筆になるはずもないのに、そうしたやり方で彫られているのである。さらに顔の美しさという点では、真の聖人や人を畏怖させる王侯の雰囲気を持っている。またミケランジェロは、神がモーセにいとも聖なる表情に付与したその神性を見事に表現したので、たいへんすばらしく輝かしく見え、一見して顔をおおうためにヴェールを求めたい気になるほどだ。さらにたいへん流麗なひだの動きをともなって彫り上げられた布地があり、筋肉質の腕や、骨や神経まで見える手など、見事な美しさと完璧さをそなえている。」次に「システィーナ礼拝堂天井画」についてです。「ミケランジェロのいないローマに、ラファエㇽロ・ダ・ウルビーノの友人であり親戚であったブラマンテがいた。ミケランジェロとはほとんど友愛の情を持っていなかったブラマンテは、法王がミケランジェロの彫刻作品を愛惜し讃えているのを知り、ラファエㇽロと二人して、ミケランジェロが戻ったら、法王が自分の墓廟の完成を望まないよう、その野心から彼を引き離そうと考えた。生存中に墓を作るのは死に急ぐようなもので、悪い兆しだと言ったのある。そして二人は、ミケランジェロが帰ってきたら、法王の叔父のシクストゥス法王追悼のために、シクストゥスがヴァティカン宮殿に建てたその礼拝堂の天井穹窿をミケランジェロに描かせねばならないと勧めたのである。こうしてそれは、ブラマンテや他のミケランジェロの競争者たちには、完璧であると思える彫刻からミケランジェロを引き離し、彼を破滅に追いやることにもなると思えたのだ。ミケランジェロはフレスコでの賦彩の経験がないので、彼に描かせれば、あまり感心しない作品を作らざるを得ず、ラファエㇽロほどうまくはできないと考えたからであった。そして万一彼がそれを描くのに成功したとしても、ことごとく法王と反目するだろうし、そうすれば、ある何らかの仕方で彼を法王の御前から追い出してしまうという彼らの目論見が、成就されるというわけであった。こうして、ミケランジェロがローマに帰ってみると、法王は一時的にせよ自分の墓廟を完成する気がなくなっており、代わりに礼拝堂の天井穹窿を描くよう、彼に命じたのである。」今回はここまでにします。