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映画「ボヘミアン・ラプソディ」雑感
先週の金曜日のレイトショーに人気急上昇中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観に行きました。映画になったロックバンドのクイーンは私より上の世代の人たちが熱狂したバンドです。当時学生だった私も日本を席巻したクイーンのヒットナンバーはよく知っていました。この映画はドキュメンタリーではありません。俳優が演じるクイーンなのです。でもそこにクイーンの創設メンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽総指揮として入っていて、事実に忠実な映画に仕上がっていました。史上最高のエンターテイナーとして知られるリード・ヴォーカルのフレディ・マーキュリーの若い頃の姿がこの映画では印象的で、まだフレディの心が一貫しておらず、また苦しみつつ破天荒な発想を持ち込む資質が、早くもスター性を感じさせる要素になっていました。同性愛に悩み、45歳の若さでエイズ感染により死去したフレディ。映画はクイーンのメンバーが憑依したかのように演じる俳優たちによって、あの頃の精神状態に連れ戻される錯覚が生じました。最後のシーンでライヴ・エイドの会場が映し出され、満員の観衆の前で演奏するクイーンは、まさに映画の観客をも巻き込む興奮の坩堝となっていました。図録にこんな一文がありました。「摩擦、衝突、葛藤、外部からの雑音。そうしたものを蹴散らしながら実験精神と新たな領域への挑戦欲求を失うことなく音楽的ケミストリーを求め続けたクイーンの音楽には、世の平均的ポピュラー・ミュージック像からすれば、特異とさえいえる部分というのが多々ある。」(増田勇一著)特異というのはロックの王道からすれば、クイーンはイロモノという悪評が立っていたことがあり、目立つキャラクター性やオペラの美学を取り入れた楽曲作りが認められていない時代がありました。この倒錯的な感覚は初めに日本で受け入れられて、一躍スターに上りつめたという話を聞いたことがあります。よく来日していたクイーンは親日でもあったということでしょうか。私たち日本人が応援したクイーン。映画でも観客が徐々に増えていることがその証拠なのかもしれません。