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池田宗弘作「悪魔シリーズ」雑感
昨日、工房で窯入れをしたので、今日は電気の関係で工房での作業は出来ませんでした。その機会を利用して朝から家内と東京の美術館に出かけました。彫刻の師匠が会員となっている自由美術展は六本木の国立新美術館で開催されていて、招待状が師匠から送られてきていました。師匠の池田宗弘先生は昔から真鍮直付けという特殊な方法で、量感のない彫刻を作り続けていて、複数から成る人物が物語の一場面を演じているのが特徴です。今回出品されていた作品も集合彫刻になっていました。タイトルは「悪魔は聖人を彫る彫刻家に貧乏神を送り付ける」という長文であり、そのタイトルが全てを物語っていました。キリスト教に纏わる聖人像を作り続けてから、先生の中では聖人の対極にある悪魔が登場し、そのシリーズとしては10年近くが経っているのではないでしょうか。私が学生の頃は、先生はまだ洗礼を受けていなかったので、生活の貧しさを謳歌する人々の模様を、風景の一部として彫刻化していました。先生はジャコメッティのような細い人体を作っていますが、ジャコメッティのようにデッサンに主眼が置かれているわけではなく、人物や動物の骨格丸出しの細い構造体で、そこに内包される空間を作っていると私は解釈しています。空間を大きく取ることで、軽やかなスケッチのような効果が表れるのです。しかも風刺の効いたテーマをやっていて、フランスの画家オノレ・ドーミエの風刺画を立体化したような雰囲気があって、当時学生だった私は一気に魅了されたのでした。その後、先生はスペインに出かけていき、キリスト教のテーマに辿り着いたようです。修道院を模したアトリエを長野県に作り、大学も退職された頃に奥様に先立たれ、現在は住居兼アトリエ「エルミタ」で一人で制作をされています。私は80代半ばに差し掛かった先生の健康を心配していますが、今回の自由美術展に出品された作品を見たら、ちょっと安心しました。私も夏にギャラリーせいほうに先生が来られると恐縮してしまい、酷暑の中で長野県からわざわざ来られた先生をどう労ったらよいのか、嬉しさと心配が交互にやってきて右往左往してしまいます。池田先生には末永く創作活動に従事してほしいと心から願っております。