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偶然が生んだ異国の街
2006年10月19日付のブログ「ムルナウの短い夏」にある通り、自分が初めて海外に出かけて辿り着いた街がドイツのムルナウでした。当時はまだドイツが東西に分断されていた時代なので、正確には西ドイツのムルナウだったわけで、西側の経済発展を物語るように、ムルナウのようにどんな小さな村でも道路が完備され、商業施設や文化施設がありました。自分は全寮制の語学学校ゲーテ・インスティチュートに通って、美術アカデミーの受験に備えていました。その頃はドイツ表現主義やバウハウスのことを知っていたはずでしたが、かつてムルナウで創作に打ち込んでいたカンディンスキーに特別な興味はなく、ミュンターと暮らしたアトリエハウスも記憶に残っていないのです。当時を思えば惜しいことをしたと後悔するばかりですが、カンディンスキーが色彩の解放を謳った絵画を完成させたムルナウが、自分にとっては初めて暮らした異国の街になっていること、それが今は最高に嬉しいと感じています。偶然が生んだ異国の街。その後の自分のカンディンスキー熱を考えると、偶然とは言え自分もムルナウにいたことに感謝しています。