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アポルロン的魂とファウスト的魂
「西洋の没落」(O.シュペングラー著 村松正俊訳 五月書房)を読んでいると、ギリシャ・ローマ文化と西洋文化の相違があらゆる場面で比較されています。簡単に言えば見たままを静的に表し、本書の語彙を使えば彫塑的と言えるギリシャ・ローマ文化をアポルロン的魂と呼び、その一方、過去や未来を空間として動的に捉え、本書の語彙を使えば音楽的と言える西洋文化をファウスト的魂と呼んでいます。こうした洞察は自分にとって初めてのことで、ギリシャ・ローマ文化と西洋文化の間に確固たる溝が存在していたことに改めて驚いています。確かにギリシャ彫刻には表情がなく、悲劇を初めとする演劇表現は単調で形式的です。それに比べて例えばシェイクスピアの劇では心理的で情念としての葛藤があり、それ故人物描写には立体的な陰影が存在します。先日のNOTE(ブログ)でゲーテによる壮大な戯曲「ファウスト」を取り上げて、その粗筋等を簡単に書いたのは、本書に度々登場するファウスト的魂とは如何なるものかを改めて自分が確認したかったためです。そうしたことを踏まえてヨーロッパに行ったなら見るものや接するものが変わっただろうと思えます。20代の渡欧前に「西洋の没落」を読破できなかった自分に悔いがありますが、今後ヨーロッパに行ける機会があれば、西洋文化の成り立ちを彼の地で考えてみたいと思っています。