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映画「顔のないヒトラーたち」について
先月のことで日が経ってしまいましたが、橫浜の中心地にあるシネマジャック&ベティに表題の映画を観に行ってきました。ドイツ映画「顔のないヒトラーたち」は実話を基に描かれた秀逸な内容だと感じました。1958年のフランクフルトからドラマは始まります。現在では信じられないことですが、当時アウシュヴィッツ強制収容所のことはドイツ国民に知られていなかったのです。当時の西ドイツは経済復興の真っ直中で、戦争の記憶を忘れ去ろうとしていました。自国が自国民自身を裁く構図、歴史認識を変えていくことはタブーでもあったのです。そこに果敢に挑戦していく検事とジャーナリストたち、ヒトラーだけではなく一般市民が罪を犯した事に対する憤り、若き検事は自分の父がナチスだった過去の発覚に対し、精神が追い詰められていきます。どれをとっても隠蔽された過去を解き明かし、罪を償わせようとする正統な努力は、後の時代を知っている私たちは共感を持って迎え入れられますが、当時の時代風潮や抵抗は如何ばかりだったのか、思い量ると大変なジレンマに陥ったのではないかと思うのです。映画は若き検事の恋愛模様を織り交ぜて、辛辣な内容ばかりではなく、ホッとさせる場面もあります。自国民の厳しい過去と向き合うと同時に、映画は若い二人の未来も描こうとしているようで、四六時中暗いテーマで進行するわけではなく、エンターティメントにも優れていて、これは観て良かったと思える映画のひとつだったと思っています。