Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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上野の「ポンピドゥーセンター傑作展」
35年ほど前にフランスの首都パリに行きました。当時、私はオーストリアのウィーンに住居を構えていて、この機会にウィーンからポルトガルの西端の岬までの鉄道旅行を決行したのでした。パリに立ち寄るとルーヴル美術館を初めとする大小規模の美術館を隈なく見て回りました。その頃ポンピドゥーセンターは完成から3年が過ぎていて、どこも新しい溌剌とした雰囲気が漂っていました。まず建物の外見に度肝を抜かれ、内部の鑑賞しやすさにも驚きました。近現代美術を収容する空間はこうでなければいけないと思っていました。日本でも1970年に万国博覧会があって、ポンピドゥーセンターは当時の万博のパビリオンを髣髴とさせる建築デザインでした。そのポンピドゥーセンターが所蔵する傑作が来日しているので、上野の東京都美術館に見に行きましたが、ほとんど忘れている作品ばかりでした。本展は美術史に残る有名な巨匠たちの作品を網羅しているのかぁと思ったくらいでしたが、東京で有名な作品が一堂に会して見られる機会は滅多にあるものではなく、美の価値観が変遷していく過程を見る絶好の機会とも取れました。図録には「自由を獲得するには絶え間ない闘いが求められる時代にあって『ポンピドゥーセンター傑作展』は1人1作が稀な機会に集うことで珍しい景色を披露し、創造の大切さ、さらにどれほどの犠牲を伴おうとも、なおそれを守る必要性を謳い上げる祭典でもある。」とありました。年代的に言えば1906年からポンピドゥーセンターが完成した77年までの作品がありました。私が特別に気に留めた作品は、後日改めて稿を起こすとして、ポンピドゥーセンターを設計した2人の建築家のコトバを最後に引用いたします。「ポンピドゥーセンターを建てる間、私たちは決して『合理的』ではなかった。私たちはつねに頭脳より心に従った。」(レンゾ・ピアノ)「ポンピドゥーセンターの成功は人々が先入観にとらわれず利用できるようなやり方を取ったところにある。パリジャンはカフェに行くように気兼ねなくポンピドゥーセンターに行く。それはとても良いことだ。」(リチャード・ロジャース)奇抜なデザインのポンピドゥーセンターはこのようにして誕生したのでした。