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千葉佐倉の「ヴォルス展」
DIC川村記念美術館は、千葉県佐倉市の森の中にあって中世の城を彷彿とさせる美しい景観を持つ美術館です。ここでは私の感覚を擽る企画展が時々あって、橫浜から遠い美術館でもよく出かけます。箱の造形作家コーネルや、黒い家具のような彫刻を作ったニーヴェルスンの展覧会は、この美術館で見ることが出来ました。今回の「ヴォルス展」も同様で、自分にとっては長い間、謎に包まれた画家の全貌を知ることが出来た展覧会でした。先日のNOTE(ブログ)で書いた通り、20代初めに私はまず評論でヴォルスを知りました。絵画を見ることがその後になってしまったので、先入観を払拭することが出来なかった画家でしたが、今回まとまった作品を見て、漸く自分なりのヴォルス・ワールドを捉え直すことが出来ました。ドイツの裕福な家庭に育ったヴォルスは、音楽や学問に長けていたようですが、父亡き後は家を離れ、フランスに渡り、どこまでも彷徨を続けていました。第二次大戦が勃発して、収容所生活を送る羽目になったヴォルスでしたが、15歳年上のフランス国籍を持つ女性と結婚したことで釈放され、写真で稼ぎながら内面を吐露した絵画も始めていました。睡眠を取らず、酒に溺れ、自暴自棄とも思える生活の果てに腐りかけた馬肉で食中毒を起こして38歳で他界、これがヴォルスの人生でした。図録によると「本当は、たぶん、自身の内面に向かってしか彷徨できなくなった彼が絵画に捉われてしまった、ということなのだ。~略~そう考えなければ、そこから死までわずか12年あまりの、作品数からいってもそのなかみからいっても濃密な、濃密というよりあまりにも集中的で、没我的で、見方によっては自己滅却的ないし自己放棄的な制作のありようをうまく理解することができない。」(千葉成夫解説)とあります。まさに作品は危険な要素を孕んだ切迫感のあるものばかりで、このNOTE(ブログ)では語り尽くせないため、また機会を改めてヴォルスの世界観を探りたいと思います。