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上野の「ゴッホ展」
昨日、東京上野の上野の森美術館で開催されている「ゴッホ展」に行ってきました。日曜日の午後で、しかも人気のある画家だったためか会場内は大変混雑していて、私は鑑賞者の間隙を縫ってゴッホを始めとするハーグ派や印象派の代表的な画家の作品を堪能してきました。フィンセント・ファン・ゴッホは、私にとって旧知の作品が多く感動も少ないのではないかと思い込んでいましたが、改めて今回来日していた「糸杉」はその激しい筆致に込められた思いに、新たな感動が呼び覚まされました。ゴッホは弟宛ての手紙の中で「輪郭や比率などはエジプトのオベリスクのように美しい。」と糸杉の印象を述べていて、画面全体がうねるような強烈な筆致で覆われていました。ここまで辿りつくまでのゴッホの絵画遍歴を図録から拾ってみたいと思います。ゴッホは初期の重要な時期にハーグ派と称される農民画家たちに影響を受けました。「漁民や農民の生活やその情景を描く現実に即したハーグ派の主題は、自由な筆致で描かれた。その筆致はしばしば、細部の描写というよりも鑑賞者の想像を促すようなものであったため、彼らの絵はスケッチのように見られることもある。ハーグ派の画家たちが目指したのは、緻密で逸話的な絵画を描くことではなく、その場面全体がもつ印象や雰囲気をとらえることだった。」その頃のゴッホの骨太なデッサンに高校生だった私は感銘を受けた記憶があります。そこから目が眩む色彩を放つ印象派へ転換をするゴッホに訪れた機会は、弟テオが関わりを持っていたようです。「画商として、また印象派の熱心な支持者として、テオが重要な役割を果たしてくれたおかげで、ファン・ゴッホは印象派の作品を容易に見ることができたうえ、画家たちに直接会うこともできた。~略~印象派の作品を見たり、また彼らと会話したりするなかでファン・ゴッホが学んだのは、色の使い方であった。それは無作為ではない、色彩理論に基づくものであった。」今回の展覧会はハーグ派と印象派の2つのグループに部屋が分かれていました。いずれもゴッホの作品は特徴をよく表していて、ゴッホの絵画遍歴が伝わりました。「技法や色彩は劇的に変化したものの、ファン・ゴッホが好んだ主題はオランダにいた頃からほとんど変わらなかった。風景や農民といった主題は、彼にとって故郷と自分を結びつけるものであり続けたのだ。生涯を通じて、ファン・ゴッホはハーグ派と印象派を中心とする多くの画家たちから影響を受けた。」(引用は全てベンノ・テンペル著)