Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

横浜の「バンクシー展」
横浜駅に隣接するアソビルで開催されているバンクシーの全貌を示す展覧会は「バンクシー展 天才か反逆者か」というタイトルがつけられています。路上に描かれたバンクシー作品はすぐ消されてしまうだけに、世界中のコレクターから作品を収集しなければ成り立たなかった展覧会ではないかと思います。一口で言えばバンクシーの世界は、ストリート・ギャングから派生したならず者のアートと言っても過言ではありません。現代の抱える矛盾や問題を挑発的に発信するアートは、常に物議を醸し出し、バンクシー自身も謎に包まれているアーティストという存在を示しています。展覧会に出品された作品はじっくり鑑賞するものではなく、瞬時にプロテストを理解するもので、そうしたあらゆる場面での主張がバンクシーの世界の醍醐味と言えるでしょう。図録から引用します。「メッセージを発信するなかで、彼はサルやネズミ、警官、イギリス王族の人々といったキャラクターを繰り返し使用し、ステンシル(孔版画)の技法を用いてこれらを描いていく。そもそもこの方法を使うようになったのは、すばやく制作でき、警察に見つからないようにとの理由からであった。」という解説がある通り、バンクシーは風刺の効いた一撃をアートを媒体にして行っていました。バンクシーの言葉が図録にありました。「私にとって、グラフィティとは驚きだ。これに対して、ほかのアートは間違いなくどれも一歩遅れている。グラフィティの世界以外でアート活動しているとしたら、それは低いレベルでやっているということだ。ほかのアートは得るべきものが少ないし、意味も力もあまりない。」反抗的な動きをするアーティストは、一昔前から比べれば少なくなっているように思いますが、そんななかで活躍するバンクシーは評価に値すると私は考えています。アートは社会矛盾への発信という役割が確かにありますが、敢えて言えばそれだけではありません。即興的なグラフィック・アートばかりをバンクシーは言葉に取り上げていますが、そこは議論のあるところでしょう。いずれにしても世界的に話題性のあるアーティストがどんな世界観を持っているのか、一見する必要があると思います。